第一条
 
  この国の名を神棲国と定める。










Glory knights!!













神棲国は山に囲まれ、国土の半分以上が森に覆われている自然に恵まれた国だ。
他国からの干渉はまったく受けず(というより認知されていない可能性が高い)、王家であるザラ家の統治と、
確立された貴族制度によって国民は豊かな日々を送っている。
ジュール家は、貴族たちの中でも最も権力のある家柄の一つである。
領地を治める政治的手腕は高く、領民たちにも信頼されているが、なによりも高名な騎士を輩出することで有名だ。
ジュール家初代当主が男爵であったのが、夫を亡くし未亡人ながらも現当主に収まったエザリア・ジュールにおいては侯爵の地位にまで上っている。
しかし、そんなジュール家は大きな秘密を抱えていたのだ。
それはジュール家の最大の秘密であり、家系の者でも知る者はほとんどいない。
極限られた少数の人間のみがその事実をひたかくしていた。









「今日もかわいいですわ、キラ様v」
ピンクの髪の女性は、鏡の前にいる彼女の全身を見て満足そうに微笑む。
「かわいいって・・・・ラクス、僕の性別忘れてない?」
彼女・・・・いや、彼はうっとうしげにスカートのフリルを摘み、疲れたようにため息をつく。
こんな姿をしているが、キラと呼ばれた少女は生物学上ではれっきとした男である。
彼の表情からわかるように、本人が好き好んでこんな格好をしているわけではない。
そしてもちろん侍女であるラクスの趣味でもない。
これこそが最大にして唯一のジュール家の秘密なのである。
「もちろんちゃんとわかっていますわ?でも、かわいい、っていう褒め言葉に性差は関係ありませんもの」
リスだってウサギだってオスメス関係なくかわいいって言うでしょう?と微笑まれ、自分はリスとかウサギ扱いかと少々・・・いや、かなり気落ちするキラ。
しかし彼女に何を言っても無駄なので諦めて身支度を黙々と続ける。
「あら?誰かノックしていません?」
キラのウィッグを探していたラクスが乾いたノック音に気付いた。
慌ててキラは身を隠し、ラクスは完全にキラが隠れたことを確認して返事をする。
「もう着替えは終ったのか?」
「イザーク!!」
ひょこりと顔を出したのはジュール家跡取りであり、キラの兄であるイザークだった。
彼の声に安心したキラは自分の格好も忘れて、大好きな兄へと抱きつく。
「そろそろ母上がやきもきしているはずだ。早く顔を見せてやれ」
飛びついてきたキラを受け止め、イザークは甘えるキラの髪を愛しげに梳いてやる。
「うん!これをつけたら終わりだから待ってて?」
大好きな兄を待たせまいと先程の不機嫌はどこへやら、大慌てで鏡に向かってウィッグを整える。
「さ、早く行こう?」
くるりと振り向いて、イザークに微笑むキラ。
キラの地毛の色に合わせた、肩までの長さのウィッグをかぶると少年の雰囲気は隠れ、誰が見ても高貴な身分の少女が出来上がった。
・・・・正面だけ見れば、だが。
「・・・キラ、髪ぐらい気にしろ。一応周りには女と言うことになっている」
イザークはブラシを持ったラクスを手で制し、近くの鏡台に置いてあった櫛でピョンピョンと跳ねた髪を丁寧に梳ってやる。
彼の優しい手つきと上品に香るコロンにキラはおとなしくイザークに身を預ける。
キラがイザークを大好きなように、イザークも自分に懐く弟を猫かわいがりしていた。
「ねー話って何だろ?」
「さあな」
普段召使たちが入れない部屋で暮らしているキラが謁見の間に呼び出されることは滅多にない。
大体エザリアが直接来るか、イザークを通して伝えられるのだが今回は特別な事情があるに違いない。
兎にも角にも、これから自分の女装姿を知らないとは言え、衆人監視もとに晒されることに、キラはこっそりと溜息をついた。





足首に絡まりそうなほど毛足の長い赤い絨毯。
謁見の間は豪華な装飾品に囲まれているが決して下品には見えない。
花の香りに包まれるそこはエザリアのセンスの良さを窺うことが出来る。
イザークは一歩中に入るとしきたり通り目礼し、キラもスカートを軽く上げる。
視線の先にいる城の主・・・自分達の母親の前に立つ。
「実は先程ザラ家の使いが舞踏会の招待状を持ってきました」
挨拶もそこそこに、真剣な面持ちのエザリアがこう切り出した。
「というわけでキラ。今度の舞踏会はイザークと一緒に出てもらいます」
「ええっ!?」
「母上!!」
驚いて口をパクパクさせるキラの代わりに、イザークが声を荒げる。
「あら、何かおかしいかしら?キラももう16歳。
ジュール家の箱入り娘もそろそろ社交界デビューしてもらわないと困るわ?」
「クッ・・・・!!」
勝ち誇ったように自分を見下ろす母親に、いざーくは言葉を詰まらせ、
口の巧い母親に逆らうことを早々に諦めたキラは、本日何度目になるかわからない溜息をついたのだった。








差し上げ小説「Glory Knight!!」1話でした。
友人の朔星くんに誕生日かなんかで頼まれたんだけど・・・・Σ彼女の誕生日から半年経ってるYO!!
あわわわわやばいー次の誕生日きちゃうーとかという危機感で慌てて書きました。とりあえず1話だけ。
これから多分長いです。しかもラスト決めてません。
こんなものですが朔星くん、受け取ってくだされ。

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