力を失くし、道を見失った少年
感情のまま戦う、真っ直ぐな瞳の少女
理想を掲げ、そのために戦うと叫ぶ少年
もう一生彼らと逢うことはないだろうが
To them, well
「どうでした?」
「ん?」
慌ててホテルを出て行く彼らの後姿を見送ると、後ろからアイシャが声をかけてきた。
「ふむ・・・・・」
結論から言うと、悪くはない気分だ。しかし・・・
「もう、彼らに逢えないというのがすごく残念だ。出来ればあの彼のMSの腕前も見たかったし、な」
彼があのカフェで少女に話していた内容と、クルーゼ隊の戦闘記録が一致していた。
つまり、彼の乗っていたMSは、連合軍の新型MSの残り1体であることがわかる。
以前、宇宙から送られてくる情報の中に、新型艦と奪取し損ねたMSのことについて触れていたものがあったが、
残された一体の戦闘記録を調べれば調べるほど、パイロットを含めて興味が引かれていった。
そのMSを乗せた連合軍新型艦がこの地球に向かっていると報告が来たときなど、あわよくばこの砂漠に・・・と、
不謹慎にも願ってしまったぐらいだ。
「あら、それだけかしら?」
しかし、彼女はボクの返答に満足いかなかったらしく、肩に寄りかかってくる。
「アイシャ・・・君はボクに一体何を言わせたいんだい?」
少々演技染みているが、疲れたように大きくため息をつく。
「窓から飛び込んできた彼についてはノーコメント?」
ああ、そうだ。あの窓から飛び込んできたエキセントリックな少年。
少年たちを助けに来たのだろうが、ボクの言葉にカチンときたらしく、目的も銃を構えることも忘れて食って掛かってきた。
「おもしろかったな、彼は」
目を細めて、少年達が歩いていった先を見つめる。
もう、彼らの姿は見えない。
「戦争に勝ち負けはない、気づかない馬鹿野郎は全員自分がぶっ倒す、か」
彼の言葉をふと思い出すと、また笑いがこみ上げてくる。
誰もが目指した、また誰もがこの泥沼のような戦況に諦めた机上の理想論。
特に、利権や土地を奪い合う戦争よりも、人種・民族紛争は怨恨が根強く残るものだ。
それでも、何の力も持ち得ない筈の少年はやってみせるというのだろうか?
若いね、とボクは呟いて笑う。
「アンディ、ああいう子たち好きでしょ?・・・もう逢えないかしらね」
「今から追いかけたとしても・・・・もう無理だろうな」
そんなに寂しそうに見えたのか、アイシャは慰めるようにボクの頬をそっと撫でる。
「あの無鉄砲さが少しうらやましい・・・と、言ったら年を取った証拠かねえ?」
こみ上げてきた笑いは苦笑へと変わった。
「隊長!!」
急に背後から呼ばれて振り返ると、
「おやダコスタくん」
うちの優秀なる副官、ダコスタくんはかなり息を切らしながらもボクのところへ走ってくる。
この様子だと、このホテル中ボクを探したのだろう。
何故なら、ボク達は彼らが他の人間に見られないように、滅多に使われない裏口にいたからだ。
「一体どうしたんですか、こんなところで・・・っ・・・」
ダコスタくんは息を整えながらも、彼の趣味である小言をボクにぶつけてくる。
「それよりもダコスタくん、ボクになにか用事があったんじゃないのかね?」
「あ、はい。先程隊長宛に、連絡が2件きました。一件は本国から、例のシステムのテストを急ぐように、とのことです」
例のシステム、と聞いた瞬間、先程の悪くない気分が一気にひどい気分になる。
もちろん顔には出さないが。
「あと、カオシュン基地から・・・・凶報、と言っていいですかね」
ダコスタくんは複雑そうな顔で笑った。
「『大天使』に新しい機体が現れたそうです」
To them, well
――――――彼らによろしく
続く
砂漠編終了です。今回は歴代ガンダムシリーズは出しませんでした。
本当はこの砂漠編は入れないつもりでしたが、なんか入れちゃいました。
アンディに対するガロードのあの答えが本当の彼の意見だと言うわけではありません。
もちろんあの考えが本当の答えでもないです。難しいっすねぇ・・・・。
今回名前だけ出てきた「ハワード老人」はガンダムWより。
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