「・・・・君は・・・・」











Sudden encounter  








活気に満ちた市場の一角にあるカフェ。
座った席は木で作られているとはいえ、座り心地はなかなかのもの。
大きめのパラソルも傍に立っていて、直射日光が当たらないだけ、それなりに快適だ。
しかし、キラはかなり居心地悪い思いをしていた。
それもこれも目の前に座る、不機嫌そうな顔をした彼女のせいだ。
金色の髪・・・意志の強そうなオレンジの瞳・・・・
そう、キラがヘリオポリスでシェルターに押し込めた彼女・・・・カガリだ。
お互い自己紹介をしたが、カガリはいきなり口を閉ざしてしまう。
「えっと・・・・・とりあえず無事みたいでよかった」
キラはいきなり自分を引っ張って、ここまで連れてきたカガリに面食らいながらも言葉を捜す。
「・・・・・・・」
不機嫌そうにうつむいたカガリの唇がかすかに動いた。
「え?」
もちろん聞き取ることの出来なかったキラは反射的に聞き返す。
すると先程の不機嫌そうにうつむいていた顔がキッとキラのほうへ向けられる。
「悪かった、って言ったんだよ!!!」
全然悪かったとは聞こえないぶっきらぼうな言い方に、キラは思わず笑ってしまった。
キラの態度にむっとした顔になるカガリ。
「あ、ごめんごめん。でも何が?」
その表情に気づいたキラは慌てて笑うことをやめ、聞き返す。
キラは彼女に謝られるようなことはしていない。
「何が・・・って、私だけシェルターに入ってお前は死んでしまったかと・・・っ!!」
くっと顔を歪めるカガリの言葉に、キラはああ、と思い出した。
あの後、アスランと敵として出会ったりストライクに乗せられたり、と前の生活からは決して考えられないようなことが
立て続けに起こったために、その後のカガリの行方にまで気が回らなかったのだ。
「あの後、お前はどうやって地球に下りたんだ?」
「えーと・・・・」
シェルター探していたら成り行きでガンダム乗ることになっちゃいました。
(・・・・なんて言えないよねぇ?)
キラはどうやってここまで来れたかという事を如何にして誤魔化さなければならないと思うと、かなり気がめいる。
カガリがGを見て憤り、嘆いていたのを見ているキラは、カガリがGに対していい感情を持っているはずがない。
それに地球に下りた状態だって、なかなか褒められたものではない。
ストライクがどんなに優れた機体とはいえ、MS単機での地球降下など己の命を顧みない馬鹿のすることだ。
「あのあとまだ空いているシェルターがあって・・・・」
どのくらい彼女にそっちの知識があるのかはわからないが、とりあえずキラは運良く脱出ポッドに乗れたということを前提の
作り話をする。しかし・・・・
「嘘だな」
彼女は一発でキラの嘘を見破った。
「オーブが助けた人命救助ポッドの中でおまえの名前も顔写真も発表されていない。
たとえザフトまたは連合軍が拾ったとしても、ヘリオポリスはオーブの所属だから難民は全てオーブに連絡が来るはずだ」
違うか?とカガリは確認する。
「・・・・違わない」
ここまでカガリに知られていてはもう誤魔化しようがない。
連合軍の船に拾われたんだけど連絡してくんなくてー、とか。
砂漠に落ちてレジスタンスに拾われてー、とか。
もう少し考えればもっとましな言い訳もあったのだが、カガリに見つめられ、馬鹿正直なキラにそこまで考える余裕は無かった。
キラは大きなため息をついて、これまでの本当の経緯を話すことにした。









「・・・・馬鹿かお前は」
すべてを話し終えた後、カガリの反応は思ったとおりだった。
「・・・・いろいろあったんだよ」
怒りを含んだカガリの物言いに、キラは自嘲気味に呟いた。
ガロードと旅を始めてからも、まだキラには迷いがあった。
ストライクを失った今、自分は何をしたらいいのか。そして何が出来るのか。
しかし、今のキラにはアークエンジェルのこともアスランのことも無事を確かめることさえ出来ない。
「それよりも、カガリはどうしてここに?オーブの子じゃなかったっけ」
それ以上今までのことに触れられたくないキラは、話を変えることにした。
「うっ・・・・それはだなぁ・・・」
そのことについては彼女も触れられたくなかったのか、カガリはしどろもどろになって言葉を濁す。
するとちょうどよく給仕が二人の前にお茶と料理を置いた。
薄いパンに新鮮な野菜にこんがりと焼いた肉が載っている。ドネル・ケバブだ。
「そんなことよりも腹減ったし、ごはんだごはん!」
カガリは渡りに船とばかりに料理のことに話題を変える。
「これはだなぁ、チリソースをかけて・・・「あいや待った!」
嬉々としてチリソースのボトルに手をかけたカガリの科白の途中に、突然脇から声がかかった。
驚いた二人が声の方向に顔を向けると、さらに驚くことになる。
「ケバブにチリソースだとぉ!?ここはヨーグルトソースをかけるのが常識だっ!!」








その頃ガロードはとある店にいた。
どうやらその店は地下にあるらしく、暑い砂漠とはうってかわってひんやりとした空気が流れている。
「ほら、俺この前の喧嘩でおもちゃ壊しちゃったろ。やっぱりあんたんところで引き受けて・・・・あ?今?今砂漠のどまんなかだよ」
地上では滅多に見かけない通信機に向かってガロードは通信相手と会話を交わす。
「そんなこと言うなよ、あんたもたまには慈善事業だっていいもんだぜ?」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
「頼むよ、今度また麦踏み手伝うから。・・・ん、終わったら“あの人”の所に持ってってくれ。置ける所ってあそこしか知らないし」
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
「わーってる。多分使うことはないだろうけど、一応、ね。“あの人”には俺から連絡しとくから。じゃ、頼むぜ、ハワードの爺さん」
まだ何事か怒鳴っている相手を無視して一方的に電話を切った。
そうでもしないと、日が沈むまで説教されるに決まっている。
そのことを知っているガロードはカードを通信機から引き抜いて、さっさと店を出た。
時間は12時30分。
(やべ、遅刻だ)
ガロードはキラと昼食を食べる約束をしていたが、話の長い相手のおかげで約束の時間を過ぎてしまった。
慌てて約束しているオープンカフェへと足を向ける。
その時だった。
ターンターンターン!!!
「・・・・銃声!?」
オープンカフェのある方向から、銃声が響いた。
ガロードは逆方向に逃げていく人々の間をすり抜けながら、急いで銃声のした場所へ向かう。
彼はこの街が砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドの本拠地であるということを知っていた。
そして、ブルーコスモスのテロも水面下で動いているということも知っていた。
ガロードはキラと別行動をとったこと、キラにテロの存在を教えなかったことを一瞬後悔する。
しかし、すぐにその考えを振り払ってキラの元に急いだ。
キラがいくらコーディネイターだからといって必ずしもテロに巻き込まれているはずが無い。
そうであることを祈りつつ、ガロードは腰から銃を引き抜き、騒ぎが起こっているカフェの様子をのぞく。
「・・・・・あっちゃ〜」
ガロードは思わず頭を抱える。
彼の祈りむなしく、彼が見た時ちょうど、キラがテロリストらしき人物を伸している場面だった。
そばには見知った顔、アンドリュー・バルトフェルドが大勢の部下に囲まれている。
明らかにキラは事件に巻き込まれていたのだ。
兎に角、この場からさりげなくキラを抜け出させなければならない。
ガロードは建物の影から様子を伺う。
しかし、
「おいおいおい、なんで普通に車に乗せられてんだよぉ〜?」
ガロードの考えを他所に、キラとソースにまみれた少女はアンドリュー・バルトフェルドの車に乗り込んでいく。
慌てて追いかけようとしたが、後の祭り。
ガロードは走り出したジープを呆然と見送る。
「・・・・・さて、どうすっかね」




Sudden encounter  
      ――――――――――突然の再会





                                                                           続く