自分の命










親友への想い












みんなみんな、無に消えた筈なのに

















Their confessions









小さな小さな孤島。
彼らが住んでいたのはそんな所だった。
後日、キラの身体は大分回復し、歩き回れるようになった。
今ではガロードに付き添ってもらって、リハビリ代わりに朝夕小屋の周りの散策が日課だ。
心地よい潮風が彼らの頬を撫でていく。
「すごく・・・きれい」
キラは砂浜に腰を下ろし、夕日が沈む遠くの海を見つめて後ろにいるであろう彼に話しかける。
「ああ、人もあまり住んでいないからな。ここらへんは俺とティファぐらいしかいない」
ティファへのおみやげのつもりか、きれいな貝を拾い集めながらガロードは相槌を打つ。
ここには、戦争の影すら見えない。
ナチュラルもコーディネーターも、連合もザフトも何もない。
ただただ、ゆっくりとした時間が流れていく。
体育座りをしているキラの隣に、貝拾いに飽きたガロードがあぐらをかいて座った。
「・・・・聞かないの?」
「なにを?」
ガロードの素朴な言葉にキラは眉を顰める。
ティファにしてもガロードにしても、どうもわからない。
彼らは自分を気遣って聞かないのか、それとも本当に興味がなくて聞かないのか。
普通なら何故あんなMSに乗って落ちてきたか、とか聞くはずだろう。
しかし、彼らはまるで示し合わせたかのように一言も尋ねなかった。
「なにを・・・ってどうして僕があんな大怪我をしていたかとかMSのこととか」
キラは横を通り抜けていく蟹を突付きながら、もう一度疑問に思ったことを口に出す。
しかし、
「そりゃ聞いて欲しくなさそうだったし、俺らが聞いてもそこで適切なアドバイスが出来るとも限らないから」
集めた貝をさらに選り分けながら、ガロードは何気なく言う。
「でも」
「でも?」
ガロードは立ち上がり、お尻の砂を払った。
「口に出して、誰かに話してみたほうが心の整理はつくんじゃないか?」
俺とかでよければ聞くよ、とガロードは人懐っこく笑った。







キラは気がついたら今までの経緯をぶちまけるようにガロードに話し続けていた。
ガロードはキラが話している間、沈黙を続けている。
「・・・・僕は守り切れなかった」
真っ直ぐ見つめるガロードの視線に耐えられなくなったように、視線を逸らす。
「守って決めたのに・・・っ・・・僕は守れなかったんだ」
キラの握り締めている拳は震え、声はかすれていた。
「アスランの手を離してまで守ると決めたのに!出来なかったんだ!!」
ザッ!!と拳を砂にたたきつけたると、ガロードは眉を寄せた。
「出来なかったなんて誰が決めたんだよ」
「え・・・・・」
「確かに結果だけみるとキラにとってはもう駄目だったかもしれない。
だけど、守れなかったから全てが終わり、というわけじゃないだろう?」
息を吐いて、キラを見つめる。
「守れなかった、って自分を責めるのは簡単だし、反省することは大切だと思う。
でもそこでやめて自分を責めているだけだったら、結局逃げていることと同じなんだよ」
ガロードは周りを見回して、ティファが傍にいないか確認した。
「んー今だから言えるんだけどさ、」
自分を見つめるキラから視線を逸らして、後ろに手をつき、空を見上げる。
「ティファさ、別にコーディネイターじゃないけど、・・・・なんつーの、予知夢とか
そういう特殊な能力を持っていたから、悪い奴等に何度も攫われたり利用されたりしてたんだ」
キラを見つけられたのもティファのおかげなんだぜー、とガロードが笑う。
「俺のミスでティファが連れ去られたこともあったし、自分自身、死にそーな目にもあったぜ?
そこで苦しいから、とかできないから、とか言って諦めたら楽になるだろうさ。でも俺は」

「自分の手が届く限り、絶対に諦めない」









ザザ・・・ンと小波だけがこの空間を支配する。
夕日はもう、海平線に消えていた。
「ガロードは・・・・強いね」
キラはポツリと呟く。
「そーかぁ?キラだっていくらでも強くなれるさ」
隣に座った彼は、気に入った貝殻の汚れを袖でごしごしと拭っている。
「人生にはどんなに難しい問題でもやるかやらないかしか選択肢はないんだぜ?
しかも正解なんて誰にも分からない。結局は自分の選択したものが正解であり、全てなんだ」
キラは考えすぎだって、とぽつりと付け加えた。
「僕にはもう何をすればいいのかさえわからないんだ」
守るべきものを見失い、ストライクという力も失った。
キラはぎゅっとズボンの裾を握り締め、顔を埋める。
「キラ」
不意に頭の上から呼ばれた声がして、顔を上げると、何時の間にかガロードは立ち上がっていた。
「わからないなら、ゆっくりと考えればいい。それでもわからなければ探しに行けばいい。時間はかかるだろうけど、確実だぜ?」
腹減ったから早く帰ろうぜー?とガロードが笑う。
「・・・・ガロードらしい」
キラは差し出された彼の手を掴み、ゆっくりと起き上がった。









「・・・・ガロード?」
ふと、小屋へ向かうガロードの足が止まる。
不思議に思ったキラが後ろから声をかけると、ガロードはゆっくりと振り向いた。
彼の顔は何故かにんまりと笑みを浮かべている。
「・・・・いいこと思いついた」
キラは何か不穏なものを感じながらも一応、何を、と聞いてみる。
そして、彼はキラにこう尋ねた。
「キラ、俺と一緒に少し旅をしないか?」と。




                                                             続く







――――――Their confessions
             彼らの告白