目の前が、真っ赤に燃える。















全身の感覚がまったく機能しない。















キラは思った。














ああ、自分は死んだのだな、と。
















His body which does not move














「・・・・・っつぅ・・・」
目を開けると、安っぽい白熱灯が揺れていた。
まわりにはイスが一個。何の飾り気のない部屋だった。
身体がひどくだるい。
キラはまったく動かない身体を、どうにか起こそうと体を震わせる。
すると、だれかが部屋に入ってきた。
「まだ、動かないで」
か細い少女の声。
視線だけ動かすと、少女が自分が今寝ているベッドの椅子に座ったことを確認した。
「・・・僕は・・・・どうして・・・」
生きているのですか。
声には直接出せなかった疑問。
自分は、単独で大気圏に突入して焼け死んだ筈。
「ひどい怪我をしていたから、ここに運んだんです」
少女はキラが聞きたかった質問とは違うことを答える。
その表情からは本当にそう思ったのか、わざと答えなかったのか読み取る事ができない。
「そう・・・ですか」
キラは少女の答えに目を伏せた。
少女はキラの額に置かれていたタオルに水を浸す。
気を失っている間に、熱も出ていたんだろう。
「・・・助けてくれて、ありがとう」
少女に笑いかけるキラ。
少女は少し笑って・・・首を振った。
「あなたを拾ってきたのは私じゃないの」
「え?」
キラは少女の言葉に辺りを見回した瞬間・・・
ばたばたん!!
「ティファ!あいつ目ぇ覚ましたのか!?」
大きな音を立ててドアが開く。隣の部屋から、今度は慌ただしく少年が入ってきた。
「ガロード」
バタバタと入ってきたガロードと呼ばれた少年は、少女・・・ティファの隣に立ってじっとキラを見つめる。
「よっ!具合はどうだ?」
ガロードは戦争ってなんですか?というぐらいの明るさでキラに声を掛けた。
「え、えぇっと」
そんなガロードに思わず面食らうキラ。
「だめよガロード。うるさくしちゃ」
答えに困るキラにティファは助け船を出す。
「おっとごめん。俺らと同年代のやつに久しぶりに会ったからうれしくなっちゃってなー」
ガロードはくしゃくしゃと頭をかいて、舌を出す。
その子供っぽい仕草に、キラの顔に思わず笑みがこぼれた。








お粥か何か食べれそうなの持ってきます、とティファが部屋を出ていった。
「目ぇ覚めてよかったなー。拾ってきた時、かなりボロボロだったから駄目かと思っちゃったよ」
キラのもとに残ったガロードはニコニコ笑いながらなかなか酷いことを言う。
そんな彼にキラは苦笑してしまう。
なんだか憎めないのだ、彼は。
「そういえばティファなんか言ってなかった?俺がお前拾ってこれたのもティファのおかげなんだけど」
「え・・・?」
意味がよく分からない。
確か彼女は“助けたのはガロード”と言っていたが、見つけたのは彼ではないのか?
「あ、言ってないなら別にいいや。礼はいらないぜ?死にそうな奴助けるのは当たり前だからな!」
びしっ!と指を突きつけられ、助けてもらったお礼を言おうと口を開きかけたキラは面食らってしまう。
「それよりもMS一機で大気圏突入なんて、根性あるよなー」
「・・・・・・ああっ!?」
「へ!?何!?」
がばっ!と飛び起き・・・ようとしたキラは予想外の体の痛みでベッドに沈む。
ガロードの何気ない一言にキラは大切なことを思い出した。
「ストライクは!?アークエンジェルはっ!!??」
確か大気圏突入の際、大切な友人達が乗っているAAとはぐれてしまった。
自分がどうして助かったのかさえ記憶にないのだ。
アークエンジェルはどうなったのか。ストライクはどうなったのか。全然わからない。
「んーと、俺がお前を拾った・・・・というより助けたって言うのかな。
いきなり空からMSが海に落ちて、で、比較的浅いところに落ちたから作業用のMSで拾ったんだ」
ガロードは縋るような視線で見つめるキラを刺激しないように、言葉を選びながら説明する。
「乗ってた機体は結構ぼろぼろだったけど、行く所に行けば直せると思う。
ストライクとかアークエンジェルってのはよくわからないけど、周囲には戦艦どころか船一隻なかったぜ?」
ガロードに告げられた言葉に、キラの顔が真っ青になった。
守れなかった、という現実の重さに。
そして、ストライクという力を失ってしまったことに。
それどころかアークエンジェルからもはぐれてしまった。
もしかしたらどこかザフトの圏内に落ちたかもしれない。
「ところで」
は、とキラの意識がガロードに戻る。
自分の考えにすっかり嵌まっていて、ガロードの存在をすっかり忘れていた。
「とりあえず記憶喪失じゃなけりゃ名前、教えてくんない?」
「あ」
そう言えば、すっかり忘れていました。

                                                                  続く





His body which does not move
    ――動かない彼の身体