どうして自分達はここにいるのか
どうして彼はここにいないのか
失ってから初めて気付く
彼のいない日常
Because I was the child who knows nothing
アークエンジェルがストライクとはぐれて10日・・・・
「・・・・やばいわね」
「よりにもよってなーんでこんなところに落ちるかね?」
アークエンジェルは南大西洋沖に落ちていた。
あの時、ストライクとはぐれまいと落下地点を変更してまで、機体を拾おうとしたが努力むなしくはぐれてしまった。
しかも落ちた地点はかなり悪かった。
本来ならば連合の制空圏内に降下する予定だったのだが、ザフトに制圧されてしまった東アジア連合の圏内に落ちてしまった。
つい最近、ザフトに制圧されたカオシュン基地など目と鼻の先だ。
マリューとフラガ、そしてナタルは艦長室に集まって地図をにらみつける。
「ヘリオポリスからろくに補給もなく弾薬は切れかけ、ヤマト少尉はストライクごとMIA。
この場所もいつザフトに見つかるか、時間の問題です」
ナタルは淡々とした口調でこのかなり大変な状況を報告する。
「アラスカに行くには、ザフトに制圧されたカオシュン基地を避けなければならないため、少々遠回りしなければ・・・」
「・・・・これはもう軍法会議ものね」
疲れたように、肩を落としてため息をつくマリュー。
暗く沈んだマリューを慰めようと、フラガはポンと肩に手を置くが、
「・・・・セクハラです」
冷たく手を払われてしまう。
「ええっ?これだけで?」
困惑したフラガが助けを求めるようにナタルを振り向くと、彼女も当たり前だと言わんばかりに頷いていた。
珍しく、食堂にヘリオポリスの学生・・・・いや、元学生だったサイ達が全員集まっていた。
それなのに誰一人として口を開こうともせず、俯いてテーブルを見つめる。
このところ敵襲だの地球降下だの、目まぐるしく変わる状況に必死でこうやって全員集まるのもずいぶん久しぶりだ。
(いや、キラがいないか・・・・)
サイは面々を見回して、ため息をつく。
地球に降りてからこういった雰囲気が続いていた。
キラと一番仲がよかったトールはかなり口数が減り、ミリアリアはそんなトールの隣で心配そうに見つめている。
カズイはこれから自分たちがどうなるのかという不安で落ち着きなく、フレイは暗い表情で沈黙を続けている。
しかし、そういうサイもかなりへこんでいた。
『ヤマト少尉の遺品を整理しろ』
そう、ナタルから告げられた思いやりのかけらもない言葉。
確かにキラはAAとはぐれ、MIAと認定された。
このNジャマーが無数に打ち込まれた大地で、エネルギーの切れたストライク、そして彼を探しだすことは不可能に近い。
だからと言って、仮にも“友人”である自分にそんなことを言うのはどうかとサイは思った。
「・・・・・・・よかったじゃない」
ポツリと呟かれた言葉に、皆が顔を上げて声の本人に視線を向ける。
声の本人・・・・フレイはいつの間にか立っていて、サイ達を見回す。
「コーディネイターがここにいるってこと自体がおかしかったのよ!」
「フレイ!!」
彼女がひどいコーディネイター嫌いであることは周知の事実ではあるが、目の前にはキラを失ってうちひしがれるトールもいる。
フレイのあまりの暴言に、サイは慌てて彼女をたしなめた。
しかし彼女はよっぽど興奮しているのか、婚約者でもあるサイをも睨みつけた。
「何よ!サイだって、本当はキラがいなくなってせいせいしてるんじゃないの!?
どんなに努力したってキラにはかなわなくって、何をしたってあの子の方が上で!!
ミリアリアだってカズイだって、皆本当はキラのこと・・・・」
その時、突然警報が艦内に鳴り響いた。
Because I was the child who knows nothing
――――――――何も知らない子供だったから
続く