迷信的AK関係3
〜どっちかってーと俺らは被害者じゃないのか?(フラガ談)〜
〜再びザラの場合〜
さて困った。
トリィのメンテも無事に終わり、俺はふむ、と考える。
俺が今こうなっているというならキラは俺の姿になっているはず。
・・・・・やばい。
俺は普通に流しているのだが、あの優しいキラがイザークの心無い罵声に耐えられるわけがない。
しかもさりげに腹黒大王ニコルが俺の変化に気づかないわけがない。
だが、どんなに心配したところで今のところ打つ手無し。
俺ははあ、と大きなため息をついた。
ともかく俺は今キラなわけなんだから、AAを自由に偵察したりストライクを奪ったりキラの私物を漁ったり被ったり・・・
「・・・・だめだ。頭が混乱している」
ブンブンと頭を振り、余計な妄想を吹き飛ばす。
確かに今の姿なら私物どころかもっといろんなこととか出来るけど、そんなことがキラにばれたら大変だ。
あいつはぼんやりしているようだが、何気に鋭い一面を持っている。
もしあんなことやこんなことをして、その事がばれて暴れられたら手がつけられない。
もっと安全かつ有益なことをしなければ・・・
「おーいキラー起きてるかー?」
「あ・・・・・」
いきなりの第一AAクルー出現。俺は一瞬パニくる。
だが。
「うん、起きてるよ。ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
「ハハハ、キラらしいな」
フフフ・・・・伊達に10年以上キラを観察しているわけじゃないさ。
第一AAクルーは何の疑いもなく俺をいつものキラだと安心する。
「トール、キラ起きてた?」
第二AAクルー出現。ついでに第一AAクルーの名前はトールだという事が判明。
「あ、ミリィ」
ミリィと呼ばれた彼女はにっこりとキラ・・・つまり俺に笑いかける。
「キラ、お腹すいてない?他の皆は今ブリッジ当番だから無理だけど、やっぱりごはんは誰かと食べないとねv」
「おまえ最近全然食ってないだろー?もっと食わなきゃもたないって」
トールは笑いながらばしばしと俺の背中を叩く。
「い、痛いよトール」
背中を叩かれて、少しむせながら苦笑する。
なんだ・・・・ナチュラルの中にもキラをわかってくれるやつはいるのか・・・・
あいつをわかってやれるのは、俺だけだと思っていたのに、あいつはもう、
――――自分の居場所を見つけていたのか・・・・・
「どーしたの?キラ」
「・・・・ううん、なんでもないよ」
心配して声をかけてくれるミリィに俺は首を振る。
喜ぶべきなのに、祝福してあげるべきなのに、
(俺の中のキラは未だ13歳だったのか・・・・・)
俺の前を歩く2人の背中を見ながらため息をついた。
・・・・・・だ・が。
「はいキラ、たくさん食べてねvv」
「残しちゃだめだぜ?」
2人に連れられて行った食堂で待ち受けていたのは、
(・・・・・食えるかこんなに!!)
山盛りごはん。(おかず・ごはん共々プレートからはみだしています)
うずたかくそびえる白飯に、俺の身体が拒否反応を起こしてプルプルと震えだす。
つーか本当にキラはあの細い身体でこんなに食べているのか!?食べているとしたらあいつの胃はブラックホールなのか!!??
ちなみに机の反対側に座っている2人のプレートには見たところ標準程度しか入っていない。
こ・・・・これはイジメか?
「ね・・・・ねえ、いつも僕こんなに・・・(汗)」
俺はキラを装いながら、恐る恐る2人に尋ねる。
「あ、フラガ大尉」
しかし俺の疑問はエンデミュオンの鷹の出現により、彼らの耳に届かなかった。
「よお坊主。たくさん食べろよ?」
彼は俺の目の前に置かれたプレートに何の疑問を持つ事なく、俺の頭をぐしゃぐしゃとかき乱す。
や・・・やっぱりパイロットはこれで標準なのか。
俺は心の中でげっそりとしながら、スプーンを握り締める。
・・・・・・・?
ふと、俺の臀部(※尻)に違和感を感じて後ろを振り返ると。
「ちっちぇーなー、本当にお前男か?」
エンデ(以下略)が、俺(キラ)の尻を
・・・触ってる?
俺の頭の中にとある単語が浮かんだ。そう・・・セクハラという単語が。
「なにすんじゃボケー!!!!!」
すばやい動きでセクハラ上司にニーキック!!
「ぐはあっ!?」
「「あぁっフラガ大尉!!」」
俺の膝は見事にセクハラ上司の顎に当たり、彼は後ろへと倒れていく。
・・・・はっ、しまった、つい地がでてしまった。
しかし目の前に置かれていた山盛りブレックファーストは俺のニーキックの衝撃によっていい感じにひっくり返っている。
よし、結果オーライ☆
まてよ・・・もしかしてキラはこの艦で毎日のようにセクハラされているのか!?
そうだ、そうに決まっている。
キラはバカがつくぐらいのお人好しで鈍くて優しいからこんなことされても何も言えないのかもしれない!
「僕が・・・・俺がやらなくて誰がやる!!」
「あ、キラ!!」
先程の2人が俺を制止するが、俺はそんなことで止まったりはしない。
俺は椅子を蹴り倒し、セクハラ上司(※フラガ)を踏みつけて廊下に飛び出していった。
そう・・・キラに害をなすもの全てを粛清するために!!
まず向かったのがAA内格納庫。
キラの性格を考えれば、一日の大半をここで過ごしているだろう。
「よぉ坊主」
後ろから声をかけられ、振り向くといかにもエンジニアって感じの黒い人が立っていた。
つか、この人の存在自体がセクハラっぽい(偏見)
「ストライクの整備のことなんだけどよ、機体のほうはもう終わるからOSのほうを調整しておいてくれ」
そのままエールパックがどうのとか修正値がどうのとかいろいろ話は続いているのだが、俺は目の前にあるストライクに目を奪われていた。
そう・・・これに乗れば俺はキラの元に行けるんじゃないかと!!
とりあえずAA内セクハラ消滅キャンペーン(キラ限定)は横に置いといて、軽やかにタラップに上る。
これはちょっとした余談だがその後、整備員の人に言われた、とキラに怒られた。
俺がストライクに乗りこむ姿はあまりにも爽やかでなかなか不気味だったらしい。
だが、そんなことなど今の俺に考える余裕はない。
コクピットに飛び乗り、うきうき気分でキーボードを引き出す。
始め、俺の指は軽快にキーボードを叩いていた。
しかし・・・だんだんと・・・速度が・・・
「なんなんだこのセキュリティーは!!」
バン!!とキーボードに手を叩きつける俺。
キラのことだからきっとプロテクトぐらいはかけているだろうと思っていたが、ここまで頑丈なものとは予想外だ。
「だが・・・俺は勝ぁつ!!!!」
何に、とは聞いてくれるな。俺は適当にパスワードを打ち込みEnter!!
ぴー
「・・・開いた」
ちなみに俺が入れたパスワードは「いちご大福」。
そういや昔からこういう系好きだったもんな・・・キラは・・・。
幼年学校の時からいちご大福やらチョコバナナを嬉しそうに食べているキラを見て必死に笑顔を作っていたっけ(甘いもの嫌い)
しみじみと昔を思い出す俺。そんなことやっているうちにOSオールクリアー。
「ぽちっとな!」
俺は目の前のボタンをぽちっと押した。
灰色の機体が鮮やかな色へとうつりかわる。
「よぉっしストライクゴー!!!!」
がこん
ストライクの角、ぶつけました。
「・・・・おやぁ〜?」
不思議に思い、もう一度足元のペダルを踏み込む。
どごん
AAで発進をしたことが無い俺はなんとか通ろうとしたが、何故か壁と仲良くなってしまう。
『キラ!!一体どうしたの!?』
すると画面から先ほどの第二AAクルーが。
「俺・・・・じゃなくて僕を待ってる人がいるんだ!!黙って行かせてくれっ!!!」
俺は目の前の少女に必死に訴えたが、
『キラを待ってるヒキガエルって、何!?キラはカエルに友達がいるの!?』
「俺はカエルじゃなーいっ!!!」
俺もブリッジも大混乱。
「あ、そういえばハッチもゲートも開いてないのか」
今更だが一番基本的なことに気付いた。
『艦長ー。キラが友達のカエルに会いに行きたいってー』
あらぬ誤解を受けたまま、第二AAクルーが上の人に報告しているのが聞こえた。
ぼそぼそと画面の向こうで相談している声も聞こえる。
この間になんとかハッチを開けないと・・・・(汗)
『キラ君?聞こえる?』
四苦八苦しているうちに、目の前のモニターから艦長らしき大人のおねいさん登場。
(チッ・・・・)
「はい、聞こえます」
俺は無視するわけにはいかず、心の中で舌を打つ。
『一体どうしたの?出撃命令は出ていないわ』
少々困惑したような彼女の表情。
『カエルに会いたいなら戦争が終わった後にでも・・・』
だからカエルじゃないって。
「僕が会いたいのはカエルじゃなくて、ザ・・・遠くにいる人です!!」
おっとあぶない。うっかりザフトと言うところだった。
『その人はキラ君の何?大事な人なの?』
「大事な人です!!ていうか僕の恋人なんです!!」
ふと、彼女の動きが止まる。表情は鳩豆って感じ。
『・・・・ええとキラ君。わんもぁぷりーず』
「だから恋人!アスラン・ザラは僕の大切な恋人なんです!!』
俺の恋人宣言にモニターの向こうの彼女は頭を抱えた。
『キラ君・・・・ちょっとそこに座りなさい』
「座ってます」
『そ、そうだったわね。じゃなくてえーと・・・』
彼女はどこか救いを求めるようにモニターの外に視線を彷徨わせる。
俺はイライラと次の言葉を待っていた時、ピキーン!と何かがひらめいた!!
(開かないなら、壊してしまえばいいんだ!!)
キラへの愛から破壊衝動を起こす俺。
「お、おい坊主!!何を考えてんだっ!?」
何か不穏な空気を感じ取ったのか、先程の黒い整備士が下で叫んでいる。
しかし俺はそんなこと気にもせず、早速グリップを握り、目の前の壁に腕を振り下ろし―――・・・
(・・・・待てよ?)
たとえ今俺がAAを破壊して、キラの元へ行ったとしてもそのことがわかったらキラはどんなに悲しむだろう。
そして・・・・どんなに怒るだろう。
(だ・・・・だめだだめだっ!!!他の手段を考えなければっ!!!)
俺は持てる脳細胞総動員で最良の手段を必死で考える。
その時だった。
ぶぴー
(・・・・・・ぶぴー?)
自分の思考に浸っていたら、変な音がディスプレイから流れる。
「あ」
俺はあまりの呆気なさに、思考が止まった。
フェイズシフトダウン・・・・・?
ストライクは鮮やかな色から灰色へと変わり、機能が停止する。
「こ・・・・こんな大事な時にっ!!」
そう、俺があまりにも長考しすぎたために、エネルギーが切れてしまったのだ。
そして10分後・・・・・
「離せっ!!俺は行かなきゃいけないんだーっ!!!」
ザフト軍エースパイロットである俺はコクピットから強制排除され、
先程目が覚めたキラのベッドへずりずりと引きずられていったのだった。
その時までにはもう、これらの俺の行動がキラに甚大なる影響を及ぼすということをすっかり俺の頭から消え去っていた。
ザラやりたい放題(笑)
「人がいる」→「ヒキガエル」ネタは昔見た某替え歌番組から。覚えている方いますかね?
ちなみにこんなに早くエネルギー切れたのはストライカーパックとかなにも付けていなかったせいです。
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