〜原因〜

アスランの婚約者(と書いて共犯者と読む)のラクスは先日届いたとある箱を再度包装していた。
「これで大丈夫かしらv」
厳重に包まれた箱に宅配便の伝票を貼り付ける。宛先はもちろん、ヴェサリウスのアスラン。
まだこの時、誰もがわからなかった。
このラクスが送った白い箱・・・「宗教いろいろセット」が両軍ともに甚大なる影響を及ぼすことを。








迷信的AK関係
 〜こんなことってあるんですね(ニコル談)〜














〜過程〜

「はーにゃーらーはーらーみーたー」
目の前の護摩壇からぱちりと火がはぜる。壁には大きな十字架が。
「なーむーふーかーしーぎーこー」
アスランはかなり切羽詰っていた。
このままのペースで追いかけていては、AAは第八艦隊と合流されてしまう。
しかし、ヴェサリウスもガモフも全力追跡中。これ以上出力を上げてはエンジンが火を噴いてしまう。
残った手段は唯一つ。
AAのエンジンが故障すること、またはキラが憎きナチュラルの陰謀に気づきストライク付でこっちに寝返ってくることを、

祈るだけだ。

他力本願というなかれ、アスランはそれほどまで煮詰まっていたのだ。
幸い、先日ラクスから送られてきた差し入れ・・・「宗教いろいろセット」にはたくさんの祈り・呪いグッズが詰め込まれていた。
その名のとおり、護摩壇を作るための薪から藁人形に各宗教の経典、果てには白装束に鼎やら何に使うのかがわからない釜まで入っている。
普段の判断能力があったなら、そんなものを使う訳がない。
だが、彼は本気だ。
(キラ・・・・何故ザフトに・・・・いや、俺の元に来ないんだ!?)
アスランは白装束で一心不乱に榊を振り回し、ぎりり、と歯軋りをする。
(ああ・・・俺のキラ・・・・はやくナチュラルの陰謀に気付いて俺の胸に飛び込んで来いっ!)
アスランのヒートアップにつられて目の前の護摩壇の炎もいっそう燃え上がる。
(なんていうかもう・・・キラがあまりに可愛すぎて、いっそのこと・・・・)

キラになりたい。

「アーメン」
ちーん
線香の煙が異常なぐらい漂う中、アスランは手元の御鈴を鳴らし、深々と十字架に頭をたれる。
このアスランの祈り(?)が届いたかどうかは、次の日判明するのだった。









〜キラさんの場合〜

ピーッピーッピーッ
今・・・・何時だろう?
聞きなれない電子音が頭の上からする。
昨日は珍しく敵襲もなく、ぐっすりと眠ることが出来た。
このごろ、毎日の戦闘に整備でどうやらかなり疲れが溜まっていたらしく、今はかなり体が楽になっている。
目を開けると見慣れた二段ベッド・・・・
(・・・・・・はい?)
じゃなかった。
僕は思わず目の前の光景に向かって疑問符を向けてしまう。
見たことのない、天井。
左を向けば怪しい宗教関連のグッズに作りかけのハロ(しかもいっぱい)。
右(壁)を向けば自分の幼年時代のポスター。
この状況にとりあえず覚悟を決めて起き上がると、やはりここはまったく見たことのない部屋。
「えっとぉ・・・・・」
窓を覗き込めば戦艦の中だということがわかる。ただしここがAAなのか、ザフト船なのかはいまいちわかりかねない。
僕の混乱する頭は3つの可能性をあげた。
1.昨日自分のベッドに寝たと思っていたが実は戦闘でアスランとか他のGにやられ、捕まった。
そしてさらに失神してしまって今目が覚めた。
2.自分は実は夢遊病で無意識のうちにフラガ大尉のベッドに潜り込んでいた。
3.実はこれは夢。
「・・・・・3番」
僕は希望的観測より3番を選択して、もう一度ベッドに横たわって目を閉じるが、
「おい!!いつまで寝ているんだ!!!」
「うわっ」
いきなりの来訪者に僕は慌てて飛び起きた。
(ザフト!?)
いきなりやってきた彼は連合の白い制服ではなく、赤い制服を着ていた。
これで一気に僕の中で可能性が1番と3番になったけど、ためしに頬をつねったら痛かったので3番も違うっぽい。
「作戦会議の時間はとっくに過ぎている!!俺を待たすとはいい度胸だな!!」
だけど、1番にしては彼の僕に対する対応が違うような・・・
彼はいまだぼんやりする僕によくわからないことを怒鳴りつづけている。どうやら彼は僕のことを知っているらしい。
ノックもせずに入ってきた銀色の髪の非常識な彼の顔を思い出そうと必死に脳内データを検索する。
(・・・・・誰だっけ)
しかし、いくら探してもUnkowun。とりあえず失礼だと思いつつも、興奮して血圧が急上昇している彼を刺激しないように名前を尋ねてみることにした。
「ええとおかっぱさん、どこかでお会いしましたっけ?」
「なんだとー!?」
聞き出し失敗。おかっぱさんはさらに逆上してしまったらしく、髪もこころなしか逆立ったように見えた。
「昨日散々お前の部屋から煙を出しまくって大気汚染していたせいで頭がおかしくなったんじゃないか!?アスラン!!!」
・・・・・・・は?
僕の頭がフリーズする。
アスラン?アスラン・ザラ?ていうか僕はキラ・ヤマトだけどおかっぱさんはザフトの制服着てて僕は一応連合軍であって彼がアスランって呼ぶことは。(ワンブレス)
「聞いているのか・・・・っておい!!」
僕はいまだ興奮が冷めないおかっぱさんを無言で押しのけ、先程扉の隙間からちらりと見えた洗面所へ向かうと、
「う・・・・嘘・・・・(汗)」
あまりのショックに声を失う。
目の前に鏡に映ったのは、僕の親友であるアスラン・ザラだったのだ。
僕とは違う濃紺の髪、エメラルドグリーンの瞳。間違いなく、3年前に別れて今は敵となってしまった親友がそこにいる。
(・・・・・ってことはアスランは僕になっている?)
人間驚きの感情が許容量を超えるとだんだん冷静になってくるらしい。
だんだん落ち着いてきて、現在の状況を考える。
「おい腰抜けっもう会議は始まってんだから早くしろ!」
洗面所に閉じこもった僕を急かすため、おかっぱさんはドアをどんどん叩きだす。
(きっと僕はアスランじゃありませんって言ったって信じてもらえないだろうなぁ・・・)
信じてもらえたとしても状況が良くなるとは思えない。
尋問され、監禁されてしまうのが目に見える。
それにアスランの立場も僕との関係が知れてしまったら、悪くなってしまう。
「・・・・・よし」
(このままアスランのふりをして、とりあえず1日を過ごしてみる!)
アスランとは幼年学校から10年以上一緒にいて、大体彼の性格とかもわかる。
今日一日目立たなければ不可能な事じゃないだろう。
僕は意を決し、洗面所のドアを開ける。
目の前には律儀に待っていてくれたおかっぱさん。
「やあ、おはよう」
いつも自分に向けてくれていたさわやか笑顔でご挨拶。
「・・・・・医務室で頭見てもらうか?」
で、さっそく失敗。







〜ザラさんの場合〜

さて問題です。
目が覚めたら自分たちが追っているはずのAAの中にいて、さらに自分が大好きな人になっていた場合、どうしたらいいでしょう?
(・・・・・・・・・・・・・・・)
俺は頭の中に浮かんだ問題を答えることにかなりためらってしまう。
わきわきと握ったり開いたりする手は見間違うことのない大好きなキラの手。
ベッドの傍らにはキラと別れる前に渡したはずのトリィが首をかしげている。
周りを見回すと、明らかにヴェサリウスの自室ではなく、狭い2段ベットが並んでいた。
このSFのような展開・現状で俺が出来るのはとりあえずこれぐらいだけだ。

「・・・・・・とりあえずトリィの監視カメラのメンテをしておくか」

                                                                      続く


こんな話をやってもいいんですかねぇ?
書いているぶんにはすっげえ楽しいですvv
それにしてもイザーク哀れ。だっておかっぱだし。

プラウザバックでお戻りください、