カゼノヒ

 

 

「・・・・寒っ!」

11月。その季節らしい寒い北風が彼の小さい体を震えさせる。

「だからその格好は寒くないか?って聞いただろう。」

その隣を歩く彼は白い息を吐きながら、隣の彼をたしなめた。

「だって部屋出たときは太陽が出ててぜんぜん寒くなかったし、こんなに遅くなるとは

思ってなかったんだよっ。腹減ったしもー早くバス来ねえかなー?」

小さな彼・・・悟空は、寒さと空腹に耐えながら遠くの道路をじっと目を凝らして見つめる。

16時45分のバスは17時になってもまだ来ない。現在も記録更新中だ。

また、風が強くなる。

「うわっ寒っ!!」

小さな体はエネルギー効率が悪いのか、すっかり冷え切ってぶるりと震える。

常に動いていなければもっと寒くなってくるので細い足はせわしなく足踏みをしていた。

しかし気休めにもならない。

日は沈み、空は朱から紺へと色を変えていき、吹きつける風は寒さを増していく。

記録は20分を超えた。

「そういえば、去年のダッフルコートはもう小さくないか?

寒いついでにコートを買おうか。」

すっかり冷たくなってしまった悟空の手を握った彼・・・焔は近くにデパートか何かないか辺りを見回す。

松井デパートが目に入った。

「もう遅いし、コートを買ったらタクシーで帰ろうな?そのほうが早いだろう。」

焔は悟空の手をとり、大きな建物へと足を向ける。

「・・・・・悟空?」

しかし悟空の足は止まったまま、顔はうつむいたまま。

「ヤダ。このままバス待ってる。」

小さな、だがはっきりとした声で焔を制止する。

「どっちにしろコート買おうと思っていたんだから今買おうと後で買おうと同じだろ?

それなら今さっさと買ってしまえばいい。風邪引くのも嫌だし。」

「いーやーだっ!せっかくここまで待ったんだから絶対45分のバスに乗る!!」

悟空はもうすでに意地になって促す焔の手をぎゅっと握る。

「それに・・・・俺、焔に色んなものを買ってもらったり、一緒に住んでいるのに家賃も出させてくれないなんて不公平だし、なんだか対等じゃない気がする。

俺だってバイトしてんだから光熱費ぐらいは出したいとは思ってんの!」

初めて聞いた。

焔は悟空のいきなりの心中告白に驚き、きょとん、となってしまう。

彼にとって悟空を甘やかすことがある意味生きがいになっているし、それが当然だと思っていた。

焔は悟空の一人や二人養うぐらい造作も無いことだった。

「悟空・・・俺は一緒に暮らせるならそれくらいの出費など痛くも痒くもないんだ。食べ物を幸せそうに食べている悟空が好きだからたくさん食べさせてやりたい。それぐらい恋人として当然だろう?」

恋人、という単語に反応して悟空の顔が少し赤くなる。

そんな初々しい反応も、焔は気に入っていた。

「それでもダメなんだって!」

しかし、当の悟空はやはり気になるらしく大人しく焔の言うことを聞こうとはしない。

こうなっては焔はお手上げだ。

まだ付き合ってそんなに経ってはいないが、悟空がこうなってしまうと頑として譲らないことなど、とっくに承知している。

焔は白いため息を吐き、悟空が待つバス停のほうへ戻る。

「じゃあ、おいで。」

焔は悟空を引き寄せ、薄めのロングコートの中に入れて、抱きしめてしまう。

「なっ・・・焔、恥ずかしいってば!!」

後ろから抱き込まれてしまった体勢に悟空は慌てて周りを見回す。

いつのまにか、後ろにいた人たちはいない。

「風邪を引いたら困るだろう?」

「また子供扱いをして・・・・。」

悟空は焔に身を預け、まだ納得していないと言うように頬を膨らませる。

「じゃあ俺が寒いから抱きつかせて?」

後ろから甘えるように焔が悟空の頬に擦り寄った。

「・・・・・ったく。」

悟空は息を吐き出し、向きを変えて彼にしがみつくように抱きついた。

記録更新25分。

まだバスは来ないけれど、まだ来ないで欲しいと思ったのは事実で。

悟空はぎゅう、と抱きしめる腕を力を込めた。

悟空たちが待っていたバスは1時間前のバスで、次のバスまであと30分あるということに

そのバスが来るまでしばらく気づかなかったのだった。

 

 
久しぶりの焔空「カゼノヒ」でした。
・・・・つーか誰ですかコイツラ。楊太はちょこちょこ書いていたし、
口調も特徴があるから書きやすいけど焔空なんか書きにくかった・・・。
焔真面目に性格作ると別人ですね。JUNE小説らのせいですかねー?

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