TV39話『雨』にて〜欠陥住宅反対〜

 

 

悟空の鼻先に水滴があたる。

湿った空気、冷たい壁の感触。

(俺・・・どうしたんだろ・・・・・・)

ぼやける視界の中、同じくぼやける記憶をたどる。

それにより悟空は焔につかまっていることを思い出した。

「・・・・・・・・?」

焔にやられたはずの肩の痛みが引いている。

先程焔に押さえつけられ、肩を入れられたのだろう。

錆付いたような鎖の音がじゃらりと響く。

(俺・・・三蔵に捨てられて・・・むしゃくしゃしている所をいきなり焔に

殴られまくって・・・・・さらにつかまっちゃって・・・・・)

そこまで悟空は思い出すと急に怒りがこみあげてくる。

自分を陥れた焔に、何も出来ない自分に・・・・・

この鉄枷が外れないことは分かっている。

分かっているけど・・・無駄だとは思っているけどこんな歯がゆい自分を

許してやれるほど悟空の心は広くない。

「くそおっ!外れろ、外れろっ!!」

力任せに腕を振り回し、鎖が悲鳴をあげる。

しかし、鎖はかなり頑丈で悲鳴はあげるが一向に切れる気配は無い。

ただし、

「外れ・・・っ・・・!?」

ぼこっ!!

「うわああっ!!??」

ちょうど鎖がつながっている壁が崩れたのだ。

これはあまりにもミラクルで張本人である悟空もいきなり外れたことに驚き

「いでっ!!」

ろくに受身も取れず地面に叩きつけられてしまった。

しばしの静寂・・・いや、今だ崩れつづける壁だけが音を立てている。

「・・・えーと・・・・・(汗)」

あまりの展開に悟空はついていけず、状況理解するために

髪をわしゃわしゃとかいた時、無責任な鎖がじゃらりとなった。

 

 

 

 

焔はかなり浮かれていた。

なんと言ったって愛しのマイスウィート孫悟空を手にいれたからだ。

しかも聞くところによると三蔵に捨てられたらしい。

(傷心の悟空・・・今こそ金蝉から奪いラブラブになれるのだなvv)

こうなったらいつもクールに決めている闘神様は何処に行ったのやら、

焔は軽やかなステップで地面を蹴りながら悟空の好物である中華まんを運ぶ。

(この中華まんを俺の手から直に食べる悟空・・・なんてかわいいんだ♪)

こんなことをすでに想像しちゃっていっちゃっている焔からは

気をつけないと鼻歌まで出てきてしまう。まあそれは何とか理性で耐えたが。

悟空を捕らえている部屋の扉の前で焔はききっと足を止めた。

焔は息を整え気持ちを落ち着かせいつもの自分に戻る。

まずはこのかっこいい自分(自惚れ)に惚れさせるのだ。

高まる胸を抑え深呼吸をし、部屋に入る。

そして悟空に話しかけるのだ。

しかし・・・・

「お目覚めだ・・・な・・・?」

(いないっ!?)

差し込む光だけが光源である部屋の悟空を縫いとめておいた壁には

目的の彼の姿が無い。壁にはただ、2つの見るも無残な穴があいていた。

焔は焦って周りを見回すが悟空は見つからない。

彼はその穴から悟空が鎖のつなぎ目の壁を壊したことを知った。

「この欠陥住宅がっ!!(怒)」

怒りに任せて焔は壁を蹴るとまた大きな穴があいてしまった。まあそれはさておいて。

「是音!是音!!」

焔は明らかに誰もいない部屋で名前を呼ぶ。すると、

「・・・なんだよ。」

柱の影から、いなかったはずの是音が姿を現した。

「孫悟空を傷心の穴で鎖がマイスイートから欠陥住宅とっ!!」

「いや訳分からんて。」

「分からないこともないだろう!て言うか分かれっ!!」

よっぽど慌てているのか焔は意味不明なことを口走る。

是音はパタパタと手を振り、焔をとめた。

「つまり、悟空が暴れたせいで鎖のつなぎ目の壁に穴があき悟空が逃げたって

ことだろう?」

「そういうことだ。こうしてはおれん、紫鴛を呼ばなくては。」

焔はどこからともなく電話を取り出す。そう、落ち着いて冷静に・・・

「もしもしっ、紫鴛、紫鴛っ!!」

「ハーイワタシリカチャン、キョウハオトモダチノオタンジョウビパーティーナノv」

「ちがうっお前じゃないっ紫鴛だ!紫鴛を出せっ!!」

なっていない(笑)

「おいおい焔よお(汗)」

一生懸命リカちゃん電話に向かって紫鴛を呼ぶ焔の姿は不気味を通り越して哀愁が漂う。

是音はどう止めればいいかすっかり困惑してしまった。

 

 

 

 

その頃悟空は・・・

「ろくなもん置いてねえなー、ここの食料庫。」

のん気に・・・と言うか無神経に1人敵の陣地で食料を漁っていた。

 

 

 

 

「まったく・・・俺の悟空は一体何処へ行ったのだ?」

焔はツカツカと廊下を歩きながら悟空を求めてさ迷い歩く。

その後ろからうんざりとした是音と紫鴛(呼び出された)がついてきている。

いつも唐突に消えたり現れたりとしているがそれは

場所が分かっているからこそ出来る芸当であり三蔵一行の前に

唐突に現れることが出来るのは哀れなスパイのたゆまぬ努力のおかげである。

「焔、孫悟空はまだあなたのものでは・・・・。」

紫鴛はそこまで言って言葉が詰まる。焔が思いっきり睨んだからだ。

「あ・・・あなたの悟空はおなかを減らしているので

多分食料庫にいるのでは?(汗)」

「なるほど。俺の悟空は食料庫か。」

どちらかと言えば自分の悟空と言うほうに納得して鷹揚と頷く焔。

そんな焔に是音と紫鴛は同時に溜息をついた。

そしてそうこうしているうちに3人は食料庫の前に立っていた。

 

 

 

 

その頃悟空は焔達が迫ってきていることを知らずのんびりと

食事の後の余韻を味わっていた。

「っか〜!食った食ったvv」

焔達の2週間分の食料を1日でほぼ完食した悟空は気持ちよさそうに転がっている。

(・・・そういや、俺なんでこんな所にいるんだろ?)

ふと悟空の頭にちょっとした疑問が浮かぶ。

そう、悟空はひさしぶりに悟浄の邪魔も三蔵の愚痴もなく気持ちよく

食事をしたことにより焔に攫われた事も、三蔵に怒られた事さえも忘れてしまったのだ。

なかなかこの性格はお得といえる。

だがこの幸せの至福は長くは続かなかったのだ。

「悟空っ!!」

いきなり扉が開け放たれる。焔だ。

「あれ?焔? ・・・なんでこんな所にいんだよ?」

・・・もう一度言うが悟空は本気で焔達に攫われた事を忘れていた。

満腹で頭に血の回らない悟空は目の前に敵がいるにもかかわらず

幸せそうにおなかを擦っている。無責任な鎖はまたもじゃらりと鳴った。

「・・・・は?」

焔は意外な悟空の反応を訝しがり眉をひそめる。

先程まであれだけ毛嫌いされていたのに、今では手のひらを返したような

この無防備さだ。これではいくら焔でも不審に思う。が。

鎖を両手首につけた悟空を見て五百年前を思い出しおもわず焔の頬が緩む。

『焔、見てよ!俺花の冠作ったんだ!!』

『焔、今度一緒に遊びに行こうな!!』

そう・・・あの無邪気で自分によく甘えてくる悟空の姿が・・・

「げふうっ!!」

「ほ・・・焔!?」

焔は思い出しすぎ、こともあろうに鼻血を出してしまった。

あまりのことに流石の悟空も驚き立ち上がる。

ちなみに是音と紫鴛は後ろで頭を抱えていたが。

「ご・・・悟空・・・・・・っ・・・」

「なんなんだよいきなり!?」

鼻を抑えながら自分のほうへ迫ってくる焔はあまりにも面妖で

悟空は思わず後ずさる。

「フフフ・・・俺の悟空・・・・・・(怪)」

(これはやばいって状況か!?)

悟空は動物的直感(セブン・センス(笑))で危険を察知し

どうやって危機を脱出するか足りない脳(失礼)を必死でフル回転させる。

『悟空・・・悟空・・・・・・』

「・・・八戒!?」

すると、悟空の耳元でさらにおかしいことに八戒の囁き声が聞こえてきた。

『悟空・・・あなたに素晴らしいアイディアを与えましょう・・・・・。』

(ありがとう八戒っ!!それでアイディアって!?)

悟空は表情が明るくなり心の中で八戒に御礼を言う。

どうやら何故いきなり自分の耳元で八戒の声が聞こえてきたかということは

どうでもいいらしい。まあそれはさておいて。

『・・・今日のような雨が降る前兆には前につけた古傷が疼くのです。

きっと湿気や気温などが関係するのですね・・・。』

「うわすっげー使えねえ。」

悟空は八戒の全然関係ないアドバイスを一言で捨てる。

(どうする・・!?考えろ俺・・・!!)

八戒のアドバイスは全然使えないということを判断した悟空は

じりじりと迫ってくる焔から逃げながらさらに必死に考える。

(・・・・・・そうだっ!!)

ふと、素晴らしいアイディアが悟空に天啓のごとく舞い降りる。

そして悟空は推敲する間もなく実行に移すことにした。

「うりゃあっ!!」

「!!??」

悟空は迫り来る焔の横を見事なスピードでくぐり抜ける!

そして悟空は迷うことなく

「・・・へ?」

後ろで突っ立っていた是音に一直線に向かう。

そして悟空は最終手段に踏み切った。

「助けて是音っ!!」

抱きっ!!

なんと、あろうことに悟空は是音に抱きついたのだ。しかも焔の目の前で。

「はあ?(汗)」

是音はあまりの出来事に対処することが出来ずただ呆然となる。

悟空はさらにその隙をついて後ろのドアから逃げ出すことに成功した。

「あ、待て!!焔、追わな・・・い・・・と?」

やっと膠着状態から抜け出した是音がなんとか抜け出し、逃げた悟空を

追いかけようとして後ろのほうを振り向くと、そこには嫉妬に燃えた焔が立っていた。

・・・合掌。

 

 

 

 

「ふぇーくしょんっ!!」

朝。昨日の雨が嘘のように晴れ、さんさんと地面を照らす。

部屋の中から雨の中悟空を探し回りすっかり風邪を引いてしまった

悟浄、三蔵と同じだけ探し回ったのにもかかわらず風邪のかの字も

見当たらない八戒が出てくる。

「まったく・・・あの猿は何処へ行っちまったんだ? ・・・あ。」

悟浄はぶつぶつと文句を言いながら扉を開けると、ジープの上に

焔たちから逃げ出してきた悟空が座っていた。

「悟空!!どこ行ってたんですか!?」

八戒が悟空に駆け寄ると悟空は何とも無い様子で

「あ、皆。」

と笑顔で答える。その笑顔はあまりにも爽やかで説教しようとしていた三蔵も

すっかり毒気を抜かれ面食らってしまった。

「わりーわりー、何か知らねーけど焔につかまってた。」

『はあ!?』

悟空のあまりの大胆発言に全員の声がハモる。

「捕まってたって・・・どうやって逃げてきたんだよ!?」

「んーと・・・秘密♪(汗)」

あまりにも奇抜・・・と言うか大胆な方法だったため悟空は敢えて伏せておく事にする。

「じゃ、とっとと次の場所へ行こうぜ(汗)なっ?」

『・・・・・・・・・?』

悟空のあまりの豹変振りに3人は顔を見合わせることしか出来なかったのだった・・・。

 

終(多分)

 


・・・是音ファンの皆様、申し訳ありませんでした。
焔ファンの皆様大変申し訳ありませんでした。
いや、本当に大好きですよ?焔も是音も。ただ愛情が歪んでいるというかなんと言うか。

つーかこの話でこんな変な話書くのって私だけでしょうか。
実際リカちゃん電話に必死に話しかける焔が書きたかっただけだし。
だからその後はもうどうでも良くなりました。

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