月光

 

 

夜の帳が下り、空は雲で覆われる深闇。

その中、ただ1人走る者がいた。

悟空。

いつもの3人は近くの宿で休んでいる。

悟空は街を見下ろせる小高い丘に登った。

ぐるりと周りを見回す。

ふと、隠れていた月が彼と周囲を照らした。

誰もいない。

「・・・・ほむら・・・・ぁ・・・」

まだ来ていないのか待ち人の名前を呼んでみる。

「どうした・・・・。」

「!!??」

だがいきなり自分が呼んだ者の声がして後ろを振り返ると、彼はいた。

すらっとした長身に存分に月光が浴びせられる。

手首の手枷がじゃらりと鳴った。

「おまえが呼んでおいてその顔はないだろう?」

驚いて、よほど変な顔をしていたのだろう。

悟空は慌てて顔をそむける。

その様子がとても愛らしくて、焔は悟空を抱きしめずにはいられない。

焔はぎゅっと、壊れ物を持つように悟空をやさしく抱き上げた。

それでもまだ顔を見せない悟空に

「見せてくれないのか・・・? おまえの顔を・・・。」

ちょっと困ったように言ってみる。

「そんなことないっ!!」

すると悟空はばっ!と焔を見る。いや、自分の顔を焔に見せたというほうが正しいか。

「あ・・・・・・。」

そして悟空が見たのは優しく自分に微笑みかける焔だった。

 

 

 

 

「・・・でなぁ、俺そのとき悟浄が小さい女の子と楽しげに街の中を

歩いてんのを見ちゃってさあ。俺ビビっちゃったよ。」

「そうか、それなら是音に教えてやらなくてはな。

からかうネタが出来たって喜ぶぞ。」

「うーん、でもそれをこの前言ったらジコーだって言ってたし。」

「ジコー・・・? ああ、時効か。」

その後、焔と悟空は崖っぷちに腰をおろし飽きることなく話し続けた。

しかし時は無慈悲にも過ぎていき悟空の瞼もだんだん重くなってくる。

それでも悟空はこの時間を無駄にすまいと必死に目をこすり欠伸をかみ殺すが

そんなこと、聡明な彼にはばればれだった。

「悟空・・・そろそろ宿に戻ったらどうだ?」

焔は眠たげな悟空の頭を撫で宿に戻るよう促す。

「・・・やだ。まだ俺焔と話していたい。」

しかし悟空は自分の頭を撫でる手を掴みぶすっと頬を膨らませて駄々をこねる。

焔は毎夜の事ながら困ってしまう。

いつも『そろそろ帰ったほうがいいのじゃないか?』と言うと

一分一秒でも一緒にいたがり必ず駄々をこねて帰ろうとはしない。

焔としては嬉しい限りなのだがそうしていつまでもいると自分はいいのだが

悟空は眠気に耐え切れず車の中で昼寝してしまうのだ。

これではあまりに不自然でほかのメンバーに怪しまれてしまい、

こうやって夜逢うこともままならなくなってしまう。

「悟空・・・また車でお昼寝をするつもりか? 俺と一緒にいたいというのは分かるが

ちゃんと横にならないとかえって疲れるだけだぞ?」

「うー・・・・・。」

焔もそれだけは避けたいがため、何とか説得しようと試みるが悟空は頑として

首を縦に振ろうとはしない。それどころか悟空はくりっとした大きな瞳で焔を見上げ

「なあ・・・焔は俺といるのが嫌なのか?」

と、さらに瞳をうるうるさせて聞く。

(・・・・・かわいい・・・・。)

焔はこんな事を考えながらも悟空の髪をくしゃっとさせながら

「そんなこと、あるはずがないだろう?俺はおまえが大好きだから、

心配して言うだけだよ。」

そう言って焔は悟空に笑いかけると少し悟空の表情が明るくなる。

「・・・本当か?」

「ああ。」

なんの疑いのない焔の声に悟空はやっと安心したのかすくっと立ち上がった。

「じゃあ・・・俺、宿に帰って寝るよ。」

「おっと・・・ちょっと待て悟空。」

「ん?」

焔に呼び止められ悟空は彼を見下ろす。焔はにっこり笑って

「おやすみのキスは?」

自分の頬を指差す。

「ばっ・・・・・(////////)!!」

悟空は焔の言葉に赤くなり後ろを向いてしまう。

「はいはい、おやすみ。」

その様子に焔は思わず苦笑し、恥かしくて出来なさそうな悟空に助け舟を出してやる。

だが悟空はきっと焔のほうへ向き直り、いきなり焔が指差した頬とは逆の

頬に

「・・・!?」

触れるか触れていないかという羽のように軽いキスをした。

「じゃっおやすみ!!(////////)」

「ちょ・・・悟く・・・・!?」

焔はびっくりして悟空を呼び止めようとするが悟空はさーっと元来た道を戻っていき、

後に残ったのは腕を伸ばして固まってしまった焔だけだ。

そしてその伸ばされた腕も力なく落ち、焔はそのまま地面に仰向けで倒れてしまう。

いまだ頬に残る、柔らかい唇の感触。

「・・・ったく。溺れそうだ・・・いや、もう溺れているか?」

その焔の呟きを聞けたのは、月だけであった。

 

 
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