「庵―・・・・・・いねえの?」

いつものように、もらった(奪ったともいう)鍵で扉を開ける。

閑散とした部屋。この部屋の持ち主の性格を表しているように飾り気もなく、

汚れているところもまったく無い。

なにかと汚れている自分の部屋とはまったく正反対だと来る度に京は思う。

しかし、肝心のこの部屋の主がいない。

(ちぇっ・・・・せっかく来たのによ。)

いきなりの身勝手な来訪者・・・草薙京は心の中で舌を打つ。

庵がいないとわかればたいしてすることの無い京は大の大人2人ぐらい余裕で

眠れるようなベッドに転がる。

別に何かを期待しているわけではないのだが、大会後することもなく(勉強はどうした)

父親が五月蝿いため、家にも居づらい京にとってここはある意味避難場所となっていた。

(こんな所で寝ていたら何気に危険だなー俺。襲ってくださいって言っているようなもんだし。)

そう思いながらも京の瞳はとろとろと落ちていった・・・・・

 

 

SLEEPING・・・・・・・

 

 

ガチャッ

(・・・・鍵が開いている・・・・・・・。)

自分の愛用のベースを背負った赤髪の男・・・・八神庵は自分の部屋に戻った時、

玄関の鍵が開いていることに気付いた。

(京・・・・・・・・だな。)

先日、ねだられて甘えられて渋々渡した部屋の合鍵で勝手に入ったのだろう。

部屋の中には別に盗られて困るようなものは無いが、無用心なことこの上ない。

「おい、京。入ったなら入ったでちゃんと鍵を・・・・?」

・・・・返事が無い。

意味もなく元気な彼は自分が入ってきたら犬のようにすぐ尻尾を振ってやってくるはずだ。

そう、不思議に思いリビングやキッチンを探すが見つからない。

彼は大抵腹を減らして冷蔵庫を漁っているか、リビングで自分が持ち込んだゲームをしている。

「・・・・まさか、な。」

絶対にないとは思うが、なんとなく目に入った寝室の扉に足を向け、ドアを開けると

「・・・・・・・・・・・・。」

京はいた。ただし、大爆睡中だったが。

先祖からの宿敵であるはずである京の無防備さに思わず庵は苦笑する。

彼は身体に何もかけず、ベッドの上に大の字となって寝ているのだ。

自分が部屋の中に入っていても気付く様子すらない。

しかしある意味、この姿はあまりにも無防備過ぎて殺そうという気も起きないのだから

自己防衛には役立っている(ような気がする)。

「おい京、京、いつまでそうやって寝ている気だ?」

庵はゆさゆさと京の身体を揺さぶるがまったく起きる様子も無い。

試しに鼻をつまんだり、頬を伸ばしたりもしたがやはりだめだった。

むしろ幸せそうにも見える。

そんな気持ちよさそうな様子の京をしばらく見つめていた後、

庵は何か不条理さを感じつつ、2人分の夕食を用意するべく寝室から出て行った。

 

 

 

 

夕食の準備はほぼ整った。あとは暖めるだけで完成するだろう。

庵は京が眠る寝室に足を向ける。

「京、起きたか?」

そろそろ起きているであろう京に声をかける。

「・・・・・・・・・。」

が、返事が聞こえない。

そんな様子に庵は思わず眉をひそめる。ドアを開けると思った通り

京は寝返りでもうったのか、先程とは少々違う姿でやはり熟睡していたのだ。

よっぽど庵のベッドが心地よいのかやはり起きるそぶりすらない。

「・・・・・京、そろそろ起きたらどうだ?」

庵は、むりやり起こそうという気はないらしく、提案するような口調で尋ねる。

いつも庵は京のペースに合わせていた。

庵は気持ちよく眠りつづける京をしばらく見つめる。気持ちよさそうに眠ったり

たまに寝返りをうって変な格好になったりと見ていて飽きない。

庵はベッドの隣に腰を下ろし、

(今日は夕飯が朝飯になるかもな・・・・。)

と、そんなかなり悠長なことを考え、自分のベースを取り出す。

彼がこの部屋にいて、こんなに静かな時など滅多にないと思い、

ついついくっと喉で笑いながらかばんからチューナーも取り出した。

 

 

 

 

目が覚め、ゆっくり起き上がって窓の外を見るといつの間にやら真っ暗になっていた。

京はぼーっとする頭で今ここで何をしていたかを思い出す。

確か、庵の部屋に来たがいなかったから一眠りしていたはずだ。

(・・・いけね、寝過ぎちまったかな。)

大きく伸びをして、目を擦る。すると、ベッドの端にいつもの赤い頭を見つけた。

「・・・・・・庵?」

いつもの見慣れた彼。調律でもしていたのかベースを持ったまま目を閉じ、

寝息をたてている。

(めずらしー・・・・こんな格好で寝るなんてね。)

京は1人心の中でごちる。いつでもどこでも気を張りつづけ、殺気を放っているような

庵以外、見たことがない。いや、寝顔さえも初めてではないだろうか。

彼よりも大抵自分が先に寝てしまい、そして大抵彼は自分よりも早く起きる。

「・・・・なにかかけないと風邪引くかな。」

しばらくしげしげと見ていた京はぽつりと呟き、自分が包まっていたシーツを上からかけてやる。

どうやら疲れているらしく、庵の起きる気配はまったく無い。

「さて、どうすっかなー?」

すっかり目が覚めてしまった京はもう一度大きな欠伸をしてから、

いつまでもこうしてはいれないと大きなベッドから降りる。

乱れた髪をわしゃわしゃとかきながら、ぺたぺたと裸足でリビングに向かう。

(ゲームとかテレビ使ったらうるさいだろうけど、ここまで来て家に帰るのもなー。)

一応、庵に遠慮する形でこれからの過ごし方について考えをめぐらす。

すると、彼はリビングと一続きになっているキッチンに夕飯の支度がしてあるのに気付いた。

作ってあるわけではなく、後は焼くだけ、という感じで置いてある。

出来立てを食べられるように、という庵の心遣いだ。

京はそんな庵の心遣いになんとなくくすぐったいような気持ちになる。

「・・・・・・・。」

ふと、京は用意されていた食材を見てある考えが浮かんだ。

 

 

 

 

小1時間後・・・・・

「・・・・・で、こうなった訳か。」

「お・・・・・おう・・・(汗)」

フライパンの上には真っ黒にこげた元高級肉。水浸しになっている床。

テーブルの上に出してあったほとんどの食器は地震があったかと思うほど

きれいに割れていて床に散乱している。

これにはさすがの庵も頭が痛くなってきた。

京の慌てて自分を呼ぶ声とスプリンクラー・火災警報機が発動している音に起こされた庵が

キッチンに行ってみるとこのような状況とさらに慌てて状況を悪化させている京がいた。

京の説明はこうだ。

庵が眠っている間、とりあえず肉を焼こうとしてコンロの火をつけたはいいが

なんだか火力が弱い気がしたので上から自分の炎で焼いてみることにした。

だが予想よりも自分の炎がかなり強かったせいで、気がつけば自分の手からではなく

肉から火が出ていたのだ(笑)

さすがにやばいと感じた京は慌てて水をかけようとした時、何かにつまづき

おもいっきりテーブルに激突。ここでテーブルの上の皿が床に落ちてほとんど割れてしまう。

その割れた音にビックリした京の動きが止まった瞬間、肉から出ていた火は

とうとう天井に届きスプリンクラーが発動。

ここでやっと異変に気がついた庵が駆けつけた訳だ。

「・・・せっかくお前が腹を減らしているだろうと思っていい肉を

買ってきたのに・・・おまえはいつもそうやって俺の成す事成す事潰していくんだな。」

あまりの衝撃的な出来事にいじけモードに突入した庵はだんだん言い方も卑屈になってくる。

そんな庵の様子にさすがにやばいと感じた京は、額に一筋の汗を流しながら

できるだけ笑顔を作ってなんとかフォローしようと庵の顔を覗きこむ。

「えっと・・・・なら俺を食べてv()」(←問題発言)

「・・・・・・・・・・・・。」

庵の動きが止まった。京も言った後で自分がかなりの問題発言をしたことに気付き、

笑顔のまま固まって言葉を失う。永遠にも思える沈黙が続いた。

「なら・・・・遠慮なく食べさせてもらおうか。」

そして、庵が動いた。

「うわわっ!?」

いきなり京は庵に肩で抱え上げられてしまい、驚いてジタバタと足を振る。

「暴れるな。落ちるぞ。」

その言葉に、京の動きがぴたっと止まった。

一度こうやって抱え上げられ、暴れて落ちたことがあるのだ。

その時は思いっきり顔から落ちてしまい、かなり痛い思いをしたことがある。

「いっ・・・庵ィ・・・その前に俺、お腹すいたんだけど?」

京は自分を抱える庵の後頭部を見つめながら、なるべく思いとどまってもらおうと

庵が好きそうな甘えた声でおねだりする。

しかし、今日の庵はそんなことは通じない。それどころか、

「そうか。なら俺のを前にも後ろにもたっぷり食べさせてやる。」

こんなふうに簡単に返される。

「うっ・・・・いっいおりんたらお下品っ(滝汗)」

なんとか誤魔化そうとするがやはり庵には通じず先程まで自分が寝ていた

ベッドに転がされ、間髪入れずに庵が上にのしかかってくる。

「何とでも言ってろ。これだけで済む事をありがたく思え。」

 

 

 

 

けだるい疲労感を体中に感じる。

身体を動かそうとしてもぎしぎしと骨が響くように感じ、

それはすでに痛いを通り越して気持ち悪いレベルだ。

「つっ・・・・・疲れたっ・・・・・!!」

京は庵にしつこく可愛がられ、今では足腰も立たない。

あまりの痛さに服を着ようという気も消えうせる。

「なんだ。あれぐらいでへばるとは、体力落ちたんじゃないか?」

「おまえが絶倫すぎるんだよ!!」

ベッドに沈んでいる京は文句を言いながらぎこちなく片足を動かして、

横で缶ビールを空けている庵をげしっと蹴りつける。

「まったく・・・・お前は足癖が悪いな。」

だがその蹴りつけた足を庵は簡単に掴んで、柔らかいふくらはぎに噛み付くようなキスをした。

「うひゃっ!!」

そのいきなりの反撃にぞくっと快感が走り、京は慌てて庵から身体を離す。

「なっなんだよ!!もうしねーからなっ!?」

噛み付くように京は言い放ち庵に背を向けた。そんな京の子供っぽい様子に

庵は思わず笑いそうになり、ぐっと息を止めた。

だがその庵の気配を察知した京の機嫌はさらに悪くなる。

「京。」

「・・・・・・・・・・あんだよ。」

庵に呼ばれ、京は無視してやろうかと思ったがそんなこと出来るはずもなく

不機嫌ながらも振り向くと、いつのまにか背後に移動した庵にいきなり顎を抑えられ

「んっ・・・・・・!!」

唇を塞がれ舌が差し込まれる。そう、先程のような貪るような・・・・

「っはあ・・・・・」

ようやく放された頃には先程やっと収まった京の呼吸もまた途絶え途絶えになってしまう。

最後にお終いとばかりにぺろっと唇を嘗められ、朦朧としていた京の意識が一気に覚め

だんだん頭に血が昇ってきたのか顔が赤くなってくる。

「なにすんだよ!!」

慌てていつのまにか腰に回っていた手を振り払い、さらにベッドの端に移動する。

「いや、これだけ元気ならもう1,2回やっても平気だな?・・・と思って。」

「出来るかっスカタン!!」

あっさりと言い放つ庵に京は手元の枕を投げつける。

だがその抵抗もあっさりと庵にキャッチされたため、京はふてくされたように

シーツに顔を埋めた。

「おい、京。」

「・・・・・・・・・・。」

自分を呼ぶ声がするが、京は無視をする。何をしても笑って反撃される庵に対して

ささやかな抵抗だった。自分の気が済むまで口を利いてやらない。

京はそう、心に決めた。しかし、

「腹減っているだろう?何か作るか?」

「・・・・・・・・・・。」

「そうか、いらないのか。じゃあ俺だけ食べることにしよう。」

「・・・・・・・食う。」

あまりの空腹と庵の言葉に簡単に京の決意は打ち砕かれる。こういう駆け引きに関しては

庵の方が一枚も二枚も上手なのだ。

「魚。俺は焼き魚が食べたい。」

京は立ち上がろうとする庵の背中にびしっと指を突きつけながら、我侭を言う。

「わかったわかった。」

そんな京を素面の時に・・・口に出したらはったおされるような言葉・・・だと

思いながら、庵は彼のリクエストに答えるべく、扉を開け放ったのだった。

 
KOF小説「SLEEPING・・・」でしたっ!
私このゲームはアドバンスをちょろっとやったぐらいなんですが、アニメ同好会の友人らが大好きなんで
プレゼント用に書いたのです。格ゲー得意じゃないけどこれの四コマとかアンソロがおもしろいっすvv

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