Shake hands with......
時間は放課後、部活の時間。
場所は3階のとある教室。
日直である彼が適当に日誌を書き、担任より書き直しの命を下された。
Saide:M
「じゃーな、犬飼。しっかり書けよ!」
教室から最後のクラスメイトが出て行くのを横目で見送る。
残っているのは俺1人。
目の前には書き直しと一言だけ書かれた紙が貼られた日誌。
本来ならこの時間はグラウンドで柔軟を終え、辰とフォームの確認をしているはずだ。
だが今日は日直。
適当に仕事をこなし、適当に日誌を書いたのだがその適当な日誌が担任の目にとまってしまった。
『私がこんなこと連絡したかしら?次のページ使って書き直していらっしゃい』
(チッ・・・・・あのババア)
俺は心の中で悪態をつきながら、さっきの奴から聞いた明日の連絡を記入していく。
するとふと・・・・窓の方から気配を感じた。
気配?
ここは3階。教室にはだれもいないことは確認済み。
気配なんて・・・・
俺は思わず手からボールペンを落としてしまう。
「・・・・バ・・・・・」
何故なら、教室の窓に信じられんモンが張り付いていたからだ。
「・・・・バカ猿?」
時間は少々戻る。
SIDE:A
「じゃあ始めようか」
目の前でニッコリ笑う牛尾キャプ。・・・・・って、マジ怖いんですけど。
そのキャプテンの後ろには校舎がそびえ立っている。
もちろん野球部の俺はいつもここにいる訳ではない。
何故ここにいるかっていうと・・・・
「まったく・・・・どうしてチェリオ君はそんなに自制できないんだい?
虎鉄君も虎鉄君だけど挑発に乗るチェリオ君も悪いんだからね」
牛尾キャプはため息をつきながら頭を抱える。
コトの発端はこうだ。
素晴らしい俺様はいつも通りグラウンドの整備を他のやつらと一緒にやっていた。
あのコゲ犬が日直とやらでいないせいか、かなり何事もなくすすむ。
だが・・・・
『Yo!凪、今日もカワイイZe★』
何のつもりか知らないがいきなりあのキザトラが俺の視界の中で憧れの凪さんに
ちょっかいかけていたんだ!!
しかも凪さんは眉を寄せて困っている(ような気がする)!!
『テメェバンダナ!!凪さんに何してんだよ!!』
もちろん俺は凪さんを守るべく勢いよくトンボを後ろへ投げ飛ばし、凪さんのほうへ
駆け寄る。なんだか後ろの方で「わー!!!」というネズッチュの叫び声と
ガスッ・・・・!!という鈍い音がしたがそんなこと気にしちゃいられない。
俺は走りこんだ勢いのままキザトラを凪さんから引き離しにかかった。
しかし、
『おっTo』
ヒョイッ
『へ?』
間抜けな擬字音が聞こえた気がした瞬間・・・・
ガシャ――――――ン!!!!
俺は素早く逃げたキザトラの代りにボール入れとバットの山に思いっきり突っ込み、
見事なほどそれら全てをひっくり返してしまったのだ。
で、その結果。
その状態のまま俺とキザトラが責任の擦りつけ合いをしていたら、3年の先輩方が
グラウンドにきてしまい、
『君達・・・・・・』
キャプよりお仕置き決定。
『・・・・なんDe・・・・』
『いいからとっとと拾うっちゃ!!』
バンダナはグラウンドに散らばったボール・バット集めと石拾い。(猪利先輩の監視付き)
そして俺はというと。
「つーかマジでこのまま登るんスか・・・・?」
「もちろん♪」
牛尾キャプより『校舎の壁Deロッククライミング☆』の命令を下されてしまった。
俺は高々とそびえ立つ校舎の壁を見上げる。
校舎は4階建。
足場は校内競馬の時通った道など無いことは無いが、決して登りやすいとは言えない。
「・・・なんでわざわざ校舎登るっスか?」
後ろから胡散臭げな目でキャプテンを睨むのは微妙にべこべこなネヅッチュー。
「そんなこと、僕の趣味だからに決まっているじゃないか」
しかしキャプはそんなことなどおかまいなしに平然と答える。
「君たちは見たくないのかい?チェリオ君の締まったお尻」
・・・・・・は!?
「今、貴重な練習時間にも関わらずここでチェリオ君のお仕置きをする意味は何か。
それはこうやって下から見るチェリオ君のお尻をじっくり鑑賞するために決まっているじゃないか!」
至極大真面目な顔でそんなこと言われましても・・・流石の俺もリアクションに困る。
「・・・・・一理ありますね」
「ずっるーい!!僕だって見た―い!!」
「・・・・・・・・(コクコク)」
・・・・・って。
「なんでお前らがいるんじゃ―――――!!!!」
そう、なぜか先程までグラウンドで練習していた辰・スバガキ・司馬が後ろに控えているじゃねーか!!
「愚問ですね猿野君」
辰は下がってもいない眼鏡をくいっと押し上げ、普通にこの俺の雄たけびに答える。
「あなたが牛尾キャプテンから直接罰を受けるとなったらあなたの身に危険が迫るに
決まっているじゃないですか。・・・抜け駆けは許しませんよ?」
・・・・・抜け駆け?
最後の一言は俺に言ったのではないらしく、3人は牛尾キャプを睨んでいる。
しかし抜け駆けって・・・・
「なんかお前らキャプと賭けでもして・・・・」
「さっ、始めようかチェリオ君」
「頑張ってね、猿のあんちゃんv」
・・・・・・・・・なんか誤魔化されたような。
「まっ、とりあえず登りましょうかね」
俺はぐるりと肩を回し、手をかけられるところを見つけて登り始める。
まあ・・・登れないことはない。
俺は腕と足で鉄筋コンクリートを挟み込み、上へとずり上がっていった。
SAIDE:M
「・・・・スパイダーマンごっこか?」
「んなわけねーだろボケ犬!!(怒)」
・・・・ぶっころ。
俺は書き途中の日誌を放り投げ、猿がへばりつく窓の方へつかつかと歩み寄った。
「な、なんだよっ?」
バカ猿は俺の行動に少々怯えたのか、少々居心地悪そうに上目遣いで俺を見る。
今の時間あいつはしましまの奴(虎鉄)にしごかれているはずなのだが、
こんな所でへばりついている事情がよく分からん。
「とりあえず・・・・どけ」
俺は猿を横のほうへ追いやり、窓の下を見下ろす。
すると、やはり。
「あ、犬飼君だー!!」
下にはこのごろ何かと厭味が多い辰と何を考えているかわからん司馬、何気に邪魔な子津、うるさい黒兎に色んな意味でタチの悪い牛尾キャプテン。
このメンツから考えて。
「なんかやったな・・・猿」
「うるせー!!」
図星を刺されたらしく猿は顔を真っ赤にして腕を振り回す。
こいつはいちいち行動が幼い。顔も黙っていればかなり幼く、整っている部類に入るのだが
いかんせん、粗雑な口調のせいで他人からはあまりよい評価を受けられない。
まあ・・・・そんなことどうだっていいが。
「・・・ったく。なんでんな所で犬ころと会わんきゃならんのだ」
どうやらここ(3階)まで来て、疲れたのか休憩をしていたらしく猿は尻の埃を払って
上を見上げた。
すると。
ぴう。
まぬけな擬似音で横風が上を向いて油断をしていた猿の体を吹き抜け、バランスを崩させた。
「・・・・おおっ!?」
「猿っ!?」
いきなりの展開に驚いた俺は。
SIDE:A
「・・・・おおっ!?」
「猿っ!?」
風でぐらりとバランスを崩し、後ろのほうへ倒れそうになる体を俺は必死に立て直そうとするが
足場はさっき犬ころによい場所からどかされて決して安定しているとはいえなかった。
わたわたと手を振り回し、ちらりと下を見ると・・・さあ落ちて来いと言っているかのように手を広げて待ち構えるキャプ。
「落ちてたまるか――――!!」
本能的に危険を察知した俺は腹筋ピーク(笑)で踏ん張り、なんとか体勢を立て直そうと
手を伸ばしたら。
(え・・・・・?)
誰かに手をつかまれた。
誰かって俺の手をつかめる奴は一人しかいないのだが・・・
「・・・・・こげ犬?」
犬飼の意外な行動に、俺はきょとりと犬飼の顔を見つめる。
「・・・・・っとりあえず早く体勢立て直せ。重い」
「なんだと―――!!」
犬飼の言葉にカチンときたが、さらに風は出てきて慌てた俺はぎゅっとあいつの手を握る。
(・・・・・こいつの手、硬ぇ)
がっちりと掴んだ犬飼の手の感触は硬く、まめの痕がところどころに出来ていた。
ピッチャーというポジションをずっとやってきたということを如実に語っている。
俺が知らない、月日を確実に。
多分他の皆もそうなんだろう。キャプだって、あの手袋の下に隠された手は多分こいつとは変わらない。
それに比べて俺の手は・・・・
SIDE:M
「・・・・・・っとりあえず早く体勢立て直せ。重い。」
「なんだと―――!!」
・・・・・咄嗟に掴んでしまった。
いつもなら黙ってみていただろう。
どうせ下にはキャプテンもいたし、他のやつらだってこいつを見ていたんだ。
落ちていったってあいつらが絶対助けるはず。
だけど。
落ちそうになって目の前に伸ばされた手は、あまりにも俺とは違い過ぎて。
いつも馬鹿ばっかりやっていて誰も気に止めていないその手は白く、荒れているところも
傍から見ても見つからない。
あの素人ぶりから高校に入るまで運動系の部活は入っていなかったんだろう。
実際握った手もその見た目どおり、男の手としてはぎりぎりなほどの細さと白さだった。
握り締めた手は柔らかく、どこが偏っているとか荒れているとかが無く握り心地がいい。
ふと、俺と会うまでの間、俺はこいつがどんなことをしていたのか知りたくなった。
別に他意は無い・・・・と思う。
いつも何かしらやっていて笑いの中心にいる猿。
守備は素人同然でギャグの時だろうかシリアスな時だろうがぼろぼろエラーをする猿。
そのくせピンチの時には必ず何かを起こしてみせる猿。
その雰囲気も、行動も全てが今まで俺の周りにいたやつらとは違って。
あの脇役(注:沢松)に聞くのも癪な気がするが。
「おい、犬!引き上げんならもっと気合入れて引き上げんかい!!」
「あ・・・・・・」
・・・・って俺は何を考えているんだ!?
俺は浸っていたようで猿の声で一気に我に返る。
ついでに。
「へ?」
手も離してしまった。
「どわ――――!!!」
猿が奇声をあげながら落ちていくような気がした。
俺は猿がキャプテンにキャッチされているだろうから下を見ることなど出来るはずも無く、
放っておいた日誌を引っつかんで逃げるように教室を出て行く。
あとであの猿に何を言われるか大体予想はつくが、今日の小競り合いのネタが出来たと内心喜んでいたのもとりあえず、事実だった。
SIDE:A
「・・・・・どうすれっつーんだ・・・・・?」
あの犬ころが何を思ったのかいきなり俺の手を離した後。
俺は根性で校舎のでっぱっている壁に足を挟み、宙ぶらりん状態になっていた。
頭の上(下?)からはキャプテンの声やネズッチューの声が聞こえているのだが
頭に血が上ってよく聞こえない。
(これって生命の危機ってやつか?)
人間、死にそうになって臨界点を超えると冷静になるのかと悟ってしまうほど
俺は何故かひどく落ち着いていた。
そんなことより。
俺は先程犬に握られていた手をじっと見る。
何の変哲も無いいつもの自分の手。
だけど、さっきまで握っていた犬の硬い手の感触がまだ残っている。
自分がこれから落ちるのかどうかより、そっちのほうが気になったなんて、
頭に血が上りすぎている。
重症だ。
「・・・・いよっとっ!!」
俺はあのこげ犬に文句を言うために、もう一度腹筋を酷使することにした。
文句も何も言わずに落ちてそのまま保健室に運ばれるなんて癪だろ?
だからまた3階まで上って、教室に戻ってくるだろう犬飼に喧嘩ふっかけて、
殴り合って、堂々と2人で保健室に行く。
そのことを考えて、俺は思わずくっと笑いが漏れた。
俺はこうやって犬飼と喧嘩するのが楽しみになっているということを自覚したから。
まだ犬飼は戻ってこない。
終わり
はい。初めてのミスフル小説「Shake hands with...」でしたっ。
初々しいですね、コイツラ。書いてて机をひっくり返したくなりました。
私はどうもキャプテンを変態にしたいようです。ああ・・・牛猿書けねえ・・・・。
絶対色物になること間違いなしv(死)
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