「・・・・なーんかハッキリしない天気。」
「雨降るよりいんじゃない?」
「・・・・いいから黙れ。」
クモノヒ
魔物の大量発生。
今までもこの時期、毎年ではないが定期的に起こっていたのでたいした脅威ではない。
正確な対処法や有効な魔法など、ちゃんとした文章に残っている。
しかし、そのたいした脅威ではないと言うのは訓練された兵士達にとってであり、
地域住民にとっては十分な脅威であり、恐怖の季節ともいえた。
そのため、神羅では民衆を味方につけるために一部隊を派遣していた。
が。
今年はテロ事件が多発し、荒れる治安にソルジャーも一般兵も関係なく駆り出され、
今日も予定されていた部隊がテロリスト対策のため出動できなかった。
だがこれ以上予定を延ばすことは出来ない。
実際、すでに魔物による被害は広がっていて元気な兵達を再編成する猶予はない。
残された選択肢は1つ。
で。
「異例な事態だよな。」
「確かに異例だよね。」
「・・・・何が不満だ。おまえらは。」
ルーファウスが勝手に決めた編成。
それは世にも恐ろしい三人組。言わずとも知れた、セフィロスとザックス、そしてクラウド。
その他は、恐ろしいほどだれもいなかった。
周りを見回しても熱帯系の植物しか見えない。
もう一度言うが、見事に誰もいなかった。
「不満なんてないですよ?サー。しかしながら前例にない人数だなって思って。」
クラウドはぶちぶち文句を言われつづけて不機嫌になったセフィロスの言葉をさらりと流す。
「もう少しマシな人間が多ければもっと早く気づいたよねー。」
しかもしっかり皮肉つきで。
もちろん、このメンバーから言って不安材料などない。
セフィロス一人だけでも良かったのだが、それはそれで何か問題を起こすので
いつもの3人になったわけだ。
それだけならまだいい。
実は大変なことを忘れていたのだ、この3人は。
ここまで乗ってきたジープには食料・水にサバイバル用装備、使い慣れた機種の重火器に銃弾が
大量に積み込まれていたが、クラウドはふとあることに気づいた。
『この樹齢ン百年の密林の中でジープが走れるわけないじゃん。』
そんなこと、わかっているだろうと思ってしまうが3人とも本当にこの時点まで
気づかなかったのだ。
人数は3人のため持ち歩ける物資はもちろん限られてくる。
そうなると自然と作戦は短期決戦にならざるを得ない。
作戦が伸びると、ここら一帯を住処とする魔物のほうが地の利があるためだんぜん不利となる。
こちらには大雑把な地図があるだけなのだ。
しかもジャングルは足場も悪く、いろんな動物が入り混じっているため魔物の気配の位置が
いまいち正しく把握できない。
そのことを考えて考えて考え尽くして、最後の問題は天気だ。
晴れならともかく、雨になると防具のほかに防寒具も用意しなければならない。
天気は物資だけではなく作戦にも影響してくる。
魔物の巣窟まで晴れ・曇りなら相手に気づかれぬよう風下を選んで迂回コース。
雨なら正面突破。雨は匂いを、気配を消してくれる。
ただいまの天候は一番微妙な曇りだった。
「作戦開始まであと3時間。それより前だと周りが暗くて鼻が利くあいつらに有利。
後だと活動時間に入って空から見つけておいた巣を捨てて次の場所へ移動してしまう。
それまでに作戦を決めなきゃなー。」
お気楽な口調でかなり重要なことを呟くザックス。
もちろん彼だって真剣に考えている。ただそう見えないだけで。
「湿度は微妙なところだから雨降るとかわからないし。」
湿度計を睨んでいるのはクラウド。
彼の本職はちがうのだが、色々な方面に長けていて自然学にも自信がある。
もちろん、それらの優れた才能が打算無しに他人に使われるかどうか。
「しかし、ここは密林だからな。天気はどうなるかわからん。
同じジャングル出身、スコールとかわからんか?」
当たり前だが、全然困っているように見えないセフィロス。
一人ジープに腰をおろし、愛刀の手入れなんぞしている。
それを人はどっしり構えていると見るか、サボっていると見るか。
「あのねえ旦那、スコールってのはいきなり降るんだからわかるわけないじゃん。
ジジイだってステッキのかわりに傘持ってんだよ。」
原始現地人らしいザックスの言葉にクラウドとセフィロスは妙に納得した。
「じゃーどうすんの?」
すっかりタメ口になっているクラウドは使い慣れたバレットガンに弾を詰めながら
セフィロスの指示を仰ぐ。
「そうだな・・・・。」
セフィロスが口を開きかけた時、クラウドにある名案が浮かんだ。
「そうだ♪どうせなら3人で賭けしない?」
「「賭け?」」
クラウドの唐突な提案にセフィロスとザックスの声が見事ハモった。
「そ。見事ドンピシャした人は負けた人2人に一つづつ言うことを聞いてもらうって
いうルールでやらない?」
クラウドは何か悪戯を思いついたような顔で恐ろしいことを言い出す。
そう、もしクラウドが勝つという事態が起これば何を要求されるかわからない。
「おお、いいねえ。じゃあ俺は晴れでクラウドには俺の部屋の掃除、旦那には酒でも
おごってもらおうかな。」
しかしイベント大好きっ子のザックスは何も考えずその賭けに1も2もなく飛びつく。
「・・・・雨。」
こうなれば踏ん反りがえっていたセフィロスも渋々賭けに乗る。
しかしセフィロスはなかなか冷静だ。この熱帯気候の密林は、晴れよりもはるかに雨が多い。
「なに賭けんの?」
ザックスはのろのろと必要な物資を詰めながら尋ねる。
「お前には酒。クラウドは、」
いったんそこで言葉を切り、クラウドを見た。
「あんた呼ばわりをやめてもらおうか。」
愛刀を鞘に収め、立ち上がってクラウドを見下ろす。
実はクラウドの自分の呼び方に少々不満があった。
ザックスはもともとこういう正確なので年下だろうが階級が下だろうが
自分のことを呼び捨てにさせているし、タメ口でもまったく気にしない。
だが確かに入隊式での自分の第一印象は最悪だったが、だからといってタメ口まで
されるほど、と思ったわけだ。
「・・・・いいよ。じゃあ俺は曇りね。負けたら正月休みは俺の自主練の相手、ザックスは
買い物の荷物もちね。」
クラウドも不敵な笑みを浮かべてセフィロスを見上げた。
しかしセフィロス・ザックスがあることに気づくのはもう少し後だった。
そう、彼は少しでも自分が負けるような勝負をふっかけるような人物ではないことを。
3時間後・・・・
「・・・・何故だ。」
「・・・・よく考えたら超リアリストのクラウドが勝つか負けるかの勝負なんて
ふっかけてくるわけないよな。」
大荷物を背負ったセフィロスとザックスは獣道を後続の彼のために踏み慣らしながら
前へ前へと進んでいく。
空はいまだ曇天。
そう、勝負の女神はクラウドに微笑んだのだ。
「いいからとっとと歩いてってくださいねサー?」
後ろではなかなか軽装のクラウドが笑顔で前の2人をつつきながら歩いてくる。
『こういう力仕事は俺よりもあんたのほうが似合うよね?(笑顔)』
クラウドの勝ちが決まった後、微笑を浮かべて必要物資を差し出されたため、
セフィロスは断るに断りきれず結局2人分持たされていた。
「でもよー余りものには福があるっていうけど本当に当てるとはな・・・・。」
ザックスはがさがさと覆いかぶさってくる枝をどかしながらぼやく。
「でもどっちにしても俺は曇りを選ぶつもりだったよ?」
「なんで?」
意味深なクラウドの言葉に前列の2人は立ち止まって振り向く。
そこには満面の笑顔のクラウドが。
「だって俺、遠足とか運動会とかそういうイベントの日はかならず曇りになる・・・・
曇り男ってやつ?」
セフィロスの肩から、荷物が滑り落ちる。
「俺最初言ったけど。『湿度は微妙なとこ』って。そういう時って大概曇りだと思うけど。」
ザックスの背中から、バックパックがごとんと音を立てて地面に落ちる。
「つまり・・・・・あんたはあんた呼ばわりで十分だってことじゃない?」
クラウドが鼻で笑う。
妙に似合っていたのがかなり不思議なところだが、そんなことなど彼らにとって問題ではない。
今回のミッション終了予定並みの部隊で1週間。
それを3人(というよりむしろ2人)は最短記録5日で完遂した。
それは何を表すのか。
動物に八つ当たりするのは止めましょう。
終
つーわけで、「クモノヒ」でしたっ
強いですね、クラウド。曇り人間なのもやっぱり名前故、でしょうかね。
なんか、こういうCPなしのほうが書きやすいよーな・・・?
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