「あれ・・・・ジーニムロッドのとこにいるあの人、だれです?」
「なんだ、おまえあの人の顔知らないのか」
(つーか・・・・・すっげぇ顔きれいなんだけど)
お邪魔虫はどっち?
「若井さん」
厩務員のおっちゃんに教えてもらった彼の名前を呼ぶと、彼は馬に触るのをやめてこちらを振り向く。
「はい?」
のほほん、とした雰囲気で彼のきれいな顔がにっこり微笑むと、マジ可愛い。
「今年からここの厩舎で働かせてもらうことになった流(ながれ)蒼次郎といいます。
機会があったら若井さんの馬に乗せてください」
ぺこり、と頭を下げると若井さんはさらに顔の笑みを深くする。
「あー今年の新人くんかー。そういえばコースポで君の紹介欄見たね。
僕のほうこそ、何かあったらよろしくね」
そう言って、若井さんもぺこり、と頭を下げる。
・・・・なんかこの人、俺よりも年上なんだろうけど動作がなんとなく幼い。
「それにしてもこんな若い人が馬主やっているの、初めて見ました。
一体若井さんはおいくつなんですか?」
「えー若くないよー。今は29歳だけどもうちょっとで三十路になっちゃうんだよね」
若いって。
俺は心の中でツッコミを入れる。
そう、馬主というのは、意外に金がかかる。
一定の収入がなければ資格を得ることも出来ないし、馬の委託料やレースの登録料、
それに馬はそう頑丈な生き物ではないから医療費や装蹄料だって馬鹿にならない。
それだけに、馬主になる人間といえば大体が四,五〇代がほとんどだ。
29歳の馬主などめったにいない。
「父がオーナーブリーダーやってたんだけど、9年前に亡くなってからは僕が引き継いだんだ。
まだ僕その頃は学生だったからぜんぜんわけわかんないうちに馬主だーとか遺産だーとか言われてごっちゃになってたけど
まあなんとかやってるし」
「はあ・・・・すごいですね」
かなり苦労しているはずなのに、この人は簡単に笑い飛ばしてしまう。
「それに僕もともと馬好きだし、僕が継がなければ父が持っていた馬たちはどこへ行くんだろう、って思ったらね」
そう言って、馬の鼻を撫でる。ジーニムロッドは嬉しそうに鼻を鳴らした。
そんな彼の顔はとてもきれいで。
もっとこの人を知りたい。
もっとこの人と話したい。
不思議と、この人はそう感じさせた。
「若井さ・・・「竜人、萩澤先生がお話があると呼んでいます」
・・・・・はぁ?
俺が話しているときに、いきなり黒いスーツ姿の男が割り込んできた。
てか、呼び捨て!?
「あ、貢くん」
・・・・・て、なんでこの人はいきなりぱぁっと表情が明るくなるんだよ!?
「あの、若井さん?」
もう一度、俺は彼を誘うために声をかける。
「あ、ごめん話途中だったよね。何?」
「・・・・・いえ・・・・・」
「・・・・・・?」
食事でも・・・・と言いかけるが、若井さんの後ろで男が睨みをきかせている。
「ごめん、先生が呼んでるみたいだからまたあとでね?」
「・・・・・はい」
もごもごと口を動かす俺は、申し訳なさそうにあやまる若井さんを前にそう返事せざるを得なかった。
そして、若井さんが厩舎の中に入っていった後、
「・・・・・悪いですが、竜人はあのような性格ですから、余計なお付き合いはご遠慮いたします」
俺にそう言って黒い男も厩舎に戻っていった。
なんか・・・・俺ってお邪魔虫ってやつかぁ?
「・・・・・おもしれーじゃん」
一人取り残された俺は、ぽつりと呟いた。
俺は人のものを取ることに抵抗なんてない。
今はあんたにとって俺はお邪魔虫だろうけど、
いつか
あんたのほうがお邪魔虫だってこと、思い知らせてやるよ。
「・・・・・てか、俺ってホモだったわけ?」
終
ウイポス小説第2弾。やっぱりこんなことばっかり考えながら89年目。
GTジョッキー編もやってみたくなったり。だって絶対主人公(男)に気がある(妄想)イケメンがいるし。
プラウザバックでお戻りください