広い広い青空の下。









ヤツはきた。












昼ごはんは青空の下で















屋上で一人いつもの食パンを齧っていると、ふっと影がさした。
「なーんかずいぶんナウイもん食ってんじゃねーか」
いつの間にか聞き慣らされた声。
「・・・・・・猿」
上を見上げると、逆光になってよく見えないが間違いない。猿だ。
猿は俺を後ろから見下ろしている。
いつもいつも俺に騙されて部活の後にあんなことされているというのに、あまりにも無用心だ。
あまりの猿の無防備っぷりに、俺は思わず鼻で笑ってしまった。
「あ、コラ犬!!なに人を鼻で笑ってんだよ!!」
そんな俺の態度が気に食わなかったのか、ムキー!!と腕を振り回す猿。
・・・だからそういうとこが猿っぽくて笑えるんだよ。
「別に。それよりも、何しに来た?」
「べっつにー?屋上でメシ食おうと思って来たらお犬ちゃまが一匹尻尾たれてエサ食ってたから構ってやっただけだけど?」
・・・・・・ぶっころ。
「それよりも犬っ!何一人で食パン齧ってんだよ!?もっと草食え草!!じゃねーと毛玉吐くぞ!?」
・・・・・・草って。
「嫌だ」
「食え!!」
「嫌だ」
「食えったら食えっ!!!」
「嫌だ」
猿は一人興奮して苦しそうに肩で息をする。
「しゃーねぇ・・・・仕方がねーから可哀想なイヌッコロに俺の手作り弁当少し分けてやるか」
手作り弁当、というところに俺は少々反応した。
猿は勝手に隣に座り、弁当の包みをおもむろに開ける。
横目で弁当の中身をちらりと見ると、意外なぐらいにきれいで栄養バランスの取れた色とりどりのおかずが詰まっていた。
「ほれ、食え」
そう言って俺の顔面に猿が作ったおにぎりが突き出される。
きれいな俵型の、おかかがついたおにぎり。
つまり・・・・これを食えって事なんだろう。
俺はあることを思いつき、猿の手からぱくっとおにぎりを食べる。
「なっ・・・・・・!?」
手で受け取るだろうと油断していた猿は驚いたのか、そのまま固まった。
チャンスとばかりに、固まったまま差し出されていた手を引き猿を引き寄せる。
「んっ・・・・・」
そしてその勢いのまま、俺は自分の唇を猿の唇に押し当てた。
少し歯が唇に当たったが構いやしない。
逃げようとする舌を追いかけ、猿の頭を抱えて逃げられないように固定する。
ぐちゅり、と濡れた音だけがこの広い屋上を支配した。
どちらのものかわからない唾液が猿の口から筋のような流れで落ちていく。
猿は夢現のような表情になり、俺はそんな猿の様子に夢中になっていた。
そのせいで。
ガツッ!!
「・・・・・・・っつぅ・・・・っ!?」
側頭部に衝撃を感じ、思わず口を離してしまう。
思わずよろめき、痛む頭を抑えて上を見上げると猿が顔を赤らめて口を一生懸命擦っていた。
どうやら、我に返った猿に殴られたらしい。
「バッキャロー!!食欲と性欲混同すんじゃねーーーーーー!!!!」
そのままお前のかあちゃんでべそーーー!!と叫びながら、猿は一目散に逃げていってしまった。
残されたのは俺と猿のほとんど手付かずの弁当。


とりあえず。
「・・・・・ごっつぉーさん」


俺の感謝の言葉を聞いたのは、この青い空だけ。





                                                                                   終わり



あんなことってなにしてんのあんたら・・・・っ!!??とは聞かないでやってください。
最後あたりの犬飼が異様なほどポエマーなのも聞かないでやってください。
関係としては多分恋人同士なんだろうけど猿が、ってかんじ。

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