CLEEN UP!

 

 

 

とあるビルの一室・・・・その部屋はある意味かなりの修羅場を迎えていた。

190cmはありそうな銀髪の髪の男とその男を見上げる金色ツンツン頭。

言わずとも分かるセフィロスとクラウドだ。

セフィロスの執務室に置いてあるテレビは画面をこうこうと照らし、

懸命にその存在を主張しているが誰も見ていない。

そう、その場にいる誰もがそれどころじゃないからだ。

母なる海を彷彿とさせる深い蒼の視線と魔洸の輝きを閉じ込めた深緑の視線が交差する。

「・・・・・私が身勝手だということは分かっている。

だが、これだけでもはっきりさせたい。」

セフィロスはクラウドに紙を突きつける。

「イヤだ!あの人とは別れてくれると言ってくれたのは嘘だったのか!?」

クラウドは受け取るのを拒否するように抱えるように頭をかかえ、ぎゅっと目をつぶる。

「私の立場を・・・・わかってくれないか・・・・?」

そんな様子をセフィロスは悲しむように見つめる。

しかし意を決したセフィロスは嫌がるクラウドの腕を捕らえ、無理矢理部屋の周りを見させる。

クラウドの視界に入ったのはいらない書類の溢れる机の上には整理整頓と言う言葉とは程遠い状態の部屋だった。

そのありさまは机の周りになんとか作業するスペースが残っているだけで、床も同じように紙くずから重要書類までよりどりみどりにばらまかれている。

そのため歩くたびに絶対何かを踏む。獣道さえ残っていない。

棚は・・・・言うまでもないだろう。不思議なことに、ゴミ箱の中身は半分を超えていない。

クラウドの顔色が・・・・青くなる。

「もう・・・・だめなんだね、俺達・・・・・。」

だが、その顔色変化も臨界点到達一歩手前でその色は青から赤へと変わっていく。

「・・・・・・・すまない。」

クラウドの縋るような視線にセフィロスは気まずそうに髪をかきあげ、明後日の方向へと視線を逸らす。

心なしか彼の握りしめられた拳が震えるのは目の錯覚だろうか。いや、目の錯覚であって欲しいと

英雄は心の中で必死に祈る。

そしてクラウドは、ようやく口を開いた。

「どうしてあんたはこんなに汚く出来るんだよっ!!??」

 

 

 

 

『愛する貴之の正妻の存在に苦悩する修吾・・・・彼の本当の幸せは訪れるのか?

次回『愛と誠〜突撃!となりの晩御飯〜』をお楽しみくださいっ』

画面に移る三流ドラマは、今視聴者側ではどんなことが起きているのか理解出来るはずもない。

だがその無神経な内容はクラウドにとって耳障りに値したのか、乱暴な動作で沈黙させられる。

「なんで、俺がわざわざあんたの部屋の掃除なんかしなくちゃならないんだよっ!?」

クラウドはたった今セフィロスから渡された正式な要請を意味する書類と数々の期限切れの書類を親の敵のようにゴミ袋(お徳用5L)へと押し込む。

「・・・それはちょうどよくお前がいたからだ。」

セフィロスは怒り狂うクラウドを宥めることも出来ず、気まずそうにぽつりと話す。

彼はクラウドの隣で必要な書類といらない書類を分別していた。

この散乱している書類の中には重要書類も混じっているので一般兵のクラウドが見たら今更だが少々まずい。

「へー。俺が今度のミッションの書類をあんたの指定時間どおりに届けたら

突然あんな正式な書類も出てきたんだ。へー。」

嫌味たっぷりの彼の言葉にセフィロスは閉口せざるをえない。

この広い世界、無敵の英雄にこれほどまでの嫌味を浴びせられる人物など他にはいないだろう。

あの入隊式での『クラウドチョコボ疑惑事件』以来、クラウドはセフィロスを“あんた”呼ばわりだ。セフィロスは何か文句を言いたげだったが、今のところそれを甘受している状態にある。

それもこれも1stソルジャーを目指すクラウドの妨害をするかのような、突然の特別私設秘書の任命。しかも一般兵を辞めたわけではないのでもちろん訓練やミッションが鬼のように入ってくる。その忙しさにクラウドは目が回りそうだ。

当然同期の兵よりもかなり給料はいいのだが、こんな雑用をやらされるならばうらやましがる奴らに替わってやりたい。

もしこんな滅茶苦茶な状況で笑って淡々と雑用をこなす奴がいたならば、そいつはきっと菩薩か何かの生まれ変わりに違いないとクラウドは思った。

「どーしてこう、いらない紙とかちゃんと捨てないかなー。どーしてきちんとファイリングが出来ないかなー。」

クラウドはだんだん大量の不要書類に辟易して、口調も投げやりになってくる。

「まだ使う書類とか机に置いておくうちに雪崩が起こったからだ。あと置ききれなくなって

床に置いておいたとか。」

「うわ悪循環。」

セフィロスの言い訳じみた反論にクラウドは一言でこき下ろす。

「つーか普通書類床に置く!?そんなの蹴ったり踏んだりしていろんなところに飛んでいくのに決まっているじゃないか!!そんなに床に置きたければ石板にでも彫って置いとけば!?」

そんなことをしたら石板で部屋が埋まります。

「ふむ・・・・なるほど、考えておこう。」

「あああこの人には皮肉も通じないのか。」

本気で納得しかけたセフィロスにクラウドは頭を抱える。

何はともあれ、頭を抱えていても部屋は片付かないと開き直ったクラウドはゴミ袋を

抱え直し、握りこぶしに力をこめた。

(とにかくこの部屋は俺が塵一つないぐらい綺麗にしてやる!!)

元来綺麗好きの掃除好きであるクラウドは汚ければ汚いほど燃える性質で、

これを見ていたセフィロスは、こころなしか彼の背景に炎が見えた気がした。

「・・・ところでサー。お尋ねしてもよろしいでしょうか?(にっこり)」

くるりと振り返ったクラウドの笑顔に

「うっ・・・・(汗)」

セフィロスの背筋に冷たいものが走る。

(何故だっ!?俺は実力も権力もハヤヒデ(違。)とは

けた違いのはずなのに、何故俺は気押されているのだっ!!??)

「なっ・・・なんだ?」

セフィロスは心の中で動揺しながらなんとか平静を保つことに成功する。

「なんだか先程より手が止まっているように見受けられますが、重要書類の区分は終られたのでしょうか?」

にっこり。

さらにクラウドはセフィロスに微笑みかける。

「い・・・・いや、あと3つぐらい山が・・・・・」

セフィロスの言葉が途中で途切れる。いや、途切れさせられた。

「溜め過ぎなんだよあんたはっ!!!(怒)」

げしっ!!

クラウドの回し蹴りが腰に(頭は高すぎて届かなかった)クリーンヒットし、

セフィロスは気持ちよくノックアウトされたのだった。

「ふぃー・・・・・・。」

クラウドは雑巾をきつく絞り、額の汗を袖で拭い、部屋を見回す。

あの足の踏み場もなかったセフィロスの執務室も床が見え、棚にはきっちりと

ファイルが並んでいる。

掃除開始から2時間。あのゴミ溜めのようだった執務室も、クラウドの決意どおりに

塵1つ落ちていない状態に復活した。

綺麗好きのクラウドもこの清潔感たっぷりの部屋に気持ちよくなり、自然と笑みがこぼれる。

ついでとばかりに拭いた窓も開け、部屋の換気は十分だ。

「おお、久しぶりに床が見える。」

「これでよろしいですか?サ・・・・・・」

後ろでセフィロスの声が聞こえてくるりと振り向いたクラウドの言葉が途切れる。

確かにクラウドはセフィロスを邪魔とばかりに部屋から追い出していた。

彼がいなかった空白の1時間、何をしていたのかは分からない。

だがクラウドは一目でセフィロスが何をしていたのか分かった。

泥まみれの靴。泥と返り血で黒いコートからは黒い液体が滴り落ちている。

多分彼は何かミッションをこなしてきたのだろう。それだけならクラウドに何も文句はない。

普通なら『たったこれだけの時間で終わらしてくるなんて・・・』と嘆息ものだろう。

だが場所が問題だった。

クラウドが先程まで一生懸命床拭きをし、ワックスまでかけた床は泥の足跡が。

クラウドが先程まで一生懸命磨き、なんだかわからない汚れを落とした棚には黒い水滴が。

「…………。」

クラウドは、言葉を失った。

 

 

 

 

「おーい、旦那いる?」

いつものようにノックもなしにザックスがセフィロスの部屋に入る。

「あれ?」

だがそこにいたのは予想もつかない人物だった。

「クラウド?セフィロスは?」

クラウドは綺麗になったセフィロスの部屋でゆっくりと午後の紅茶を楽しんでいる。(訓練はどうした)

もちろん床にも、棚にもしみ1つない。

「あ、ザックス。お茶でもどう?」

クラウドはセフィロス同様ザックスにもタメ口で気軽にお茶を勧める。

「いや、俺は旦那探してるんだけど・・・・・。」

「ここって住人飲まないくせにオプションかなんかでティーセットが備え付けられてんだよね。

もったいなくない?」

「えーとぉ・・・旦那・・・・・は?」

「うーん、やっぱり午後は英国式だね。お茶自体は濃いから先にホットミルクからカップに注がないと。ザックスは砂糖いる?」

「・・・・・・・・・・・・。」

先ほどからのザックスの問いは綺麗に無視されている。これはもしかしてもしかしなくても・・・。

「おーいい匂いしてんじゃん。なんか食うもんない?」

「うん、確かここにクッキーが・・・・。」

ザックスは本能的にクラウドの中の黒いものを感じ、素直に午後の紅茶をいただくことにした。

(すまん、旦那・・・・・っ!!俺にこれ以上追求できる勇気はないからすみやかに成仏してくれ!!)

暖かい日差しの中、にこやかにクラウドと談笑しながらザックスは心の中で泣いたのだった。

 

 

ちーん(合掌)

 

 

 
FF7第2段の「CLEEN UP!」でしたっ!
私も綺麗好きなクラウド欲しいvv私の部屋、今なんだか勉強が出来ないです。本とかで机が埋まって。
ただ黒クラウドはいらないです・・・すぐ汚すんですよ。自分。

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