「太公望。」

 

365名を封神し終え、封神計画は終わりを告げた。

女禍もなんとか倒し、わしは元始天尊様の元に戻っていた。

 

「よくぞ、封神計画をなしとげた。」

 

これからは普通の道士に戻り、永遠に修行を続けるつもりだった。

あやつとともに…

しかし…

 

「おぬしには人間界に戻ってもらう。」

 

君に恋をした天女が

天に帰らない

帰りたくないと

泣いたら

君はきっと

 

「おぬしはこれまでの戦いで力を失った。ゆうきょうにはもうすでに

迎えに来るよう言ってある。人間に戻り、年を重ねるがよい。」

 

                *

「はぁ、はぁ、…」

楊ゼンの修行所…固く門戸を閉ざしている。

止めるじじいを無視してここまで走ってきた。

大体、この時間にいるはずだ。

「楊ゼン、楊ゼン…。」

とんとんと扉を叩く。

「太公望…師叔…。」

いつもの声が聞こえた。

「楊ゼン…わしは…わしは人間界に戻りたくない。」

「どうしたのです…?前は入り浸るほど好きだったのに…。」

「わからぬ…。だがおぬしとは離れたくない…この戸を開けてくれ。」

楊ゼンは黙りこくる。

「楊…ゼン?」

「…だめです…。僕はもうあなたに会えません。

あなたはここの者ではないのです。彼女を待たせているのでしょう?

早く…早く行っておあげなさい。」

「よぉ…ゼン…。」

「…っく…早く!!!」

 

                 *

 

師叔の軽い足音が…去っていった。

僕は扉に頭をコツンとぶつける。

…本当は…この扉を開け、抱きしめたかった…。

あの身体を…この腕で…。

だが、もはや師叔は人間…。

仙道…妖怪である僕はもっと…遠い存在になった。

相反するもの、許されぬ禁忌…。

会ったら別れるのがつらくなる。

抱きしめたら離せなくなる。

「これが…今生の別れです…師叔…。」

僕の目から…知らず知らずのうちに…涙が流れていた。

 

君はきっと

つきはなして

天に帰すのでしょうね。

それが君の

天女への愛なら

 

「…楊…ゼン…。」

 

天女は生まれて初めて

“愛”というものを

知るでしょう。

                          続く

 
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