生きていることは幸せであり不幸せだと言ったあの人
出会ったことが幸せであり不幸せだと言ったあの人
それでも僕は・・・・・
幸せの定義
「わしの幸せ?」
「ええ、是非とも聞かせてください」
皆が寝静まった丑三つ時・・・楊ゼンの部屋は先ほどまで行われていた情事の雰囲気が未だ漂っていた。
「むー・・・・」
シーツに包まりながら、自分の胸におとなしく収まる太公望はしばし言葉を捜す。
「ちなみに僕はあなたの中にいるとっ・・・・」
楊ゼンは顔面を殴られ、否応なく言葉を強制終了させられた。
「だあほっ(///////)!!そんなサブイこというでないっ!!!」
殴った本人である太公望は鳥肌が立ったように、両腕で自分の体を抱きしめる。
(サブイって・・・・・これでも僕は恋人なんだけど)
あまりにもシャイ(?)な恋人に、楊ゼンはため息をつく。
「なんでまたわしの幸せなんぞ聞きたがるのだ」
それでも考えてくれているらしい。
ぶつぶつと文句を言いながら、太公望は眉を寄せる。
「恋人の僕としては気になるところなんですよ。どうすればあなたが幸せになってくれるかということは」
楊ゼンが太公望の頭に顔を寄せると、石鹸の匂いがした。
「ふむ・・・・しかしそもそも幸せというものはどういうものを指すのだ?」
ぴょこりと楊ゼンの抱きしめる腕から太公望が顔を覗かせる。
「めぐりあわせのよいこと・・・・ですか?」
「それは国語辞典に載っているような幸せであろう。
確かにわしらはめぐりあわせのいいこと、身体的・精神的に満たされた状態を幸せと言うかもしれん。
しかし、それは本当に幸せと呼べるのか?」
「・・・・・どういうことですか?」
「例えばわしが桃を食べている時が幸せだとする。その時わしは満たされているから幸せと言えるであろう。
しかし桃が無限に手に入る訳ではないし、無限に手に入るとしてもそれが全てわしの腹に入りきる訳がない。
つまり、桃を食べられる幸せも桃が食べられないという不幸せも相補関係にあるのだ」
太公望はごろりと仰向けになり、天井を仰ぎ見る。
「時にはただそれを知っているということさえ、わしらを不幸にさせる。
今の状況よりも満たされた生活を知っているがために、人は自分が不幸せだと思い込むのだ」
「では師叔は世の中には幸せも不幸せもないとおっしゃるんですか?」
「いや、相対論的な話だよ。もちろん幸せも不幸せもあるが、程度の問題なのだ。
例えば、転んで怪我をしたとしよう。それは不幸せなことか?」
「それは・・・怪我をしたのなら不幸せでしょう」
「うむ。しかし、もしかしたらそのまま激しく転んで首の骨を折って死んでいたやもしれん。
そう考えるとそんな膝の1つや2つ擦りむいただけで済んだという事は幸せ・・・まではいかなくても、不幸せではないであろう?」
「しかしそれはあまりにも極端すぎませんか?」
「そうかもしれん・・・しかしわしらは心の奥底では、生きているだけで常に恐怖を感じているかもな。
人と出会う幸せと別れる不幸せ・・・何かを得る幸せと失う不幸せ・・・たまにわしは考えてしまうのだ。」
「何も知らないということが、一番の幸せなのではないか、と」
それでも僕は幸せでした
あなたの存在を知ったこと
あなたが隣にいること
それが僕の“幸せの定義”
久しぶりの封神小説です。
タイトルは「幸せの定義」だけど全然幸せそうじゃないのはご愛嬌v(死)
これで安心して100質書けます。
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