トゥーランドット

 

 

皇帝の名においてこれを皆に伝える

王家の血筋を持ち、そして3つの謎を解きし者に

わが麗しき姫を与えん。

望むものはドラを3回鳴らせ

姫が謎を与える

答えよ

ならば与えん

答えられなかった者には……

 

 

 

 

よどんだ空気。

崩れ、雨さえ防げない建物。

死体のように横たわる人々。

ここはこういう所だ。

彼がこの街に来て一日も経っていないが、すぐにこの街を理解した。

戦に破れ、追われる身となった王子にはあっているかもしれない。

しかし、その彼の見た目はそんな事を微塵も感じさせない。

手入れをあまりされていないに関わらず肩を流れるきれいな蒼髪、

利発さを伺える澄んだ瞳、幼い頃からしっかりしつけられていたのか

垣間見える高貴な仕草、長い間の逃亡生活でボロボロになった衣服を除けば

どこをとっても完璧であった。

まあそのボロボロとなった衣服も彼の姿を引きたてるだけだったが。

彼は自分の姿がこの街では目立つと自覚しているのかしていないのか、

よくわからないが人込みにまぎれようとした時だった。

「…そのお姿は……王子様であらせられますか!?」

王子と呼ばれた彼は後ろを振り向くと

「……父上!!」

そこには王子の父親である元国王の玉鼎と知らない青色の髪をした

青年がいた。

「楊ゼン…なのか……?」

玉鼎はどこかよくわからない所を見つめながら小さな声で彼の息子を探す。

(目が…見えないのか……!?)

彼が手を握るとやはり玉鼎は目が見えないらしく、息子の手の感触を確かめるように握った。

「申し訳ありませんでした父上……僕がついていなかったばっかりに……。」

「いいのだよ。そもそも私がしっかりしていないからお前や家臣に

こんな目に合わせてしまったのだ…。」

楊ゼンと呼ばれた王子は後ろの青年に目をやる。

見慣れない青年を楊ゼンは玉鼎に尋ねた。

「彼は?」

「ああ、彼は普賢という名だ。私が国を追われて以来、ずっと私の身の回りの

世話をしてくれている。」

僕はそれを聞いて普賢の手も握る。

「すまない…僕が不甲斐ないばかりに君にまで迷惑をかけてしまって…。」

しかし普賢はにっこり笑い、

「いいえ、何年か前に王宮で奴隷だったぼくに王子様は微笑んでくれました。

それが忘れられなくてぼくはここにいるのです。

王子様や王様のお役に立てる事はぼくにとって喜びですから。」

と、楊ゼンの手を握り返す。

その時だった。

「処刑が始まるぞ――――!!」

彼らはお互いのことを話そうとした時だった。

遠くからよく通る声が聞こえる。

道端で転がっていた人々が蘇るように起きだし、皆ある場所へと

向かって歩いて行った。

「……………?」

楊ゼンと普賢はお互い顔を見合わせ、玉鼎の手を引いてゆっくりと人々が

向かって行った場所へと歩き出すことにした。

 

 

 

「姫様っ!!」

「太公望様!!どうか御慈悲を!!!」

人々の中から哀願の叫びが発せられる。

楊ゼンたちが人々に追いついた時、すでに広場ではたくさんの人々が

集まっていた。

広場の中心には若い、白い布みたいなものを羽織った男が今まさに

首をはねられんとしている。

「すいません、あの人は何をしたのですか?」

状況が理解できず楊ゼンは前にいた男に尋ねる事にした。

「何をしたも、あの男は太公望様の3つの謎に挑んで、

それに敗れ首をはねられるはねられるのさ。」

「3つの…謎?」

「ああ、その3つの謎に答えられた者は姫様と結婚できるのだが

首をはねられた者はこれで13人目だ。

これを決めた太公望様はとても美しい方なのだが

冷酷過ぎる。」

ふっと男が上を見上げそれにつられるように楊ゼンも上を見上げると

何人かの女官に囲まれている者が見える。

「あれは……。」

「あれが我ら皇帝陛下のご息女、太公望様だ。」

白いヴェールをかぶり顔がよく見えない。

ふっと風でヴェールがそよぎ、楊ゼンにちらりと顔が見えた時、

楊ゼンは体に衝撃が走った。

(なんて…美しい人なんだ……!!)

ふら…と思わず足が進む。

楊ゼンは広場の中心に向かって…いや、太公望の方へと向かって行った。

「王子様!!」

普賢が楊ゼンを止める。

だがその声すら楊ゼンには届かない。

結局、恋をした王子の歩みを止めたのは謎を解けなかった者の首をはねられた

音であった。

 

 

 

先程まで人々で埋もれていた広場はもう誰もいない。

いるのは楊ゼンと玉鼎、そして普賢だけだった。

だが楊ゼンはずっと何かを考えているのか黙ったままだ。

「どうなされたのですか?王子様。」

普賢は心配になり、楊ゼンに尋ねる。

だが、楊ゼンは普賢の心配通りとんでもない事を言い出した。

「普賢…僕は3つの謎に挑もうと思っているんだ。」

「い、いけません!!」

普賢は慌てて止める。

「これまでに何人もの人達が処刑されています!

解けるわけがありません、死に行くだけです!!」

しかし楊ゼンは

「そんなのやってみないとわからないじゃないか!!」

と1歩も譲らない。

楊ゼンも普賢もお互い立場を忘れ睨み合う。

その時だった。

「そこの異国人。おまえら3つの謎に挑戦する気か?」

建物の陰からこんな街に似つかわしくない明るい声が広場に響く。

楊ゼンと普賢が振り向くと若い3人衆が立っているのを確認した。

「あんた、もし3つの謎に挑戦しようとしているのならやめときな。

命を落とすだけだぜ。」

「ああ、雷震子の言う通りだ。俺っち達は何人もの死をみている。

太公望様の謎を解けるものなどいね―さ。」

「君達は?」

楊ゼンが名を尋ねると

「俺っちは天化。こっちが雷震子にナタクだ。役人をやっている。

あーた、死ぬとわかっていんのにまだ挑戦したいさ?」

と、なんだか溜息をつかれる。

「そんなの、やってみないとわからないじゃないか。」

楊ゼンはそんなことを言われカチンときたのか

ムキになって言い返した。

「だめだ王子よ。私達と旅に出よう。」

「そうです。こんな所で命を落としてはいけません!!」

玉鼎も普賢も反対し、どうにか楊ゼンを止めようとする。

だが、そんなことで楊ゼンはあきらめたりしない。

かえって楊ゼンを煽ってしまった。

「あの人に恋をした僕を止めるなど誰にも出来ない!!」

楊ゼンは止める天化達のわきをすり抜け勢い良くドラを3回叩く!!

そして広い広場にドラの音が響いた。

 

 

                          続
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