午睡

 

 

 

 

三連休の2日目。

彼らはどこかへ行くなどと考えることもなく、家に引き篭もる事を選んだ。

それもこれも出不精な彼のせい。

日頃から太公望は家に引き篭もって仕事をしているせいか、彼は混雑を心底嫌っていた。

この国では民族大移動という言葉どおり、人々は休みになるとなにかの一つ覚えのごとく、

レジャー施設へと一気に詰め掛ける。

山に登るにしてもマナーの悪いハイカーのゴミに登るようなものだし、

海に行くとしても泳ぐ場所などなく、塩水の湯船に浸かるといっても過言ではない。

そうなるとわかっているのにやはり行ってしまうのは、日本人の悲しい性だろうか。

(こんな日は家に篭もるのが一番だ。)

彼は果てしなく後ろ向きだがなかなか建設的だといえる。

インドア派である太公望は快適な温度に設定してある家の中で鼻歌でも歌いだしそうなほど

ご機嫌だった。何といっても楊ゼンの休みはあと1日ある。

仕事時間が限りなく不規則な自分はそうも言っていられないが。

居間の扉の取っ手に手をかけ、楊ゼンがそこにいることを感じてそのまま扉を開ける。

太公望はゲームでもしようとプレステ一式が手に。

「楊ゼ・・・・・?」

(・・・・・・・?)

しかし、姿が見えない。

「いると思ったのに2階か?・・・・・あ。」

ひょい、と自分に背を向けていたソファを覗き込むと、そこに楊ゼンがいた。

長めのソファに身を預け、気持ちよさそうに寝息を立てていたが。

(なんだか・・・・・楊ゼンの寝顔は初めてみるような・・・・。)

それもそのはず、太公望も仕事を持っているのだがすべてパソコンと新聞、テレビがあれば事足りる。少々けちをつけるとしたら時間帯が不規則で、世の中の動き方によっては夜中に叩き起こされることもしばしあるということか。

しかし楊ゼンはそれ以上忙しい職種のため、本来なら1週間に2,3度深夜過ぎに

帰宅出来ればいいほうなのだ。

しかしそれだと太公望に淋しい思いをさせてしまうと、無理矢理仕事を家に持ち帰ることで

7時までに帰ってきている。

だがそのせいで家にいても寝るのは深夜になり、太公望が先に寝てしまうパターンが多い。

もちろん、違う意味で太公望が先に寝てしまう(?)ということもあるが。

ふむ、と太公望は顎に手をあてて考える。

(起こしてもべつに怒らないであろうが・・・せっかくの休みだし寝させてやるかのう?

ゲームするのも音量下げてやればいいであろうし。)

1人でゲームをすることを選んだ太公望は、楊ゼンを起こさぬようにそっと隣を通って

テレビにゲームを接続し、電源を付けた。

 

 

 

〜♪

テレビから陳腐な音楽が流れる。

色とりどりの画面はせわしなく移り変わり、その様子をぼやっと太公望は眺めながら

コントローラーを動かす。

(なんだかこやつ・・・髪を青く染めたら楊ゼンに似ているような・・・・。)

炎の中に勇ましい立ち姿を見せる敵役のムービーはなかなか上出来で、まるで実際の人物が

動いているようだ。

だるそうに会話を進めながら、ゲームとは関係の無いことを考えだすのは飽きたからなのだろうか、一気に太公望の集中が途切れてしまう。それでも切りのいいところまで行かないと今までやった2時間が無駄になってしまう。

イベントが終わり、自由に動かせるようになった主人公をセーブポイントまで動かした。

それほど毎日のようにゲームをやっているわけではないのでこれ以上続けたら頭痛をもよおすことを、太公望はいやになるくらい経験していた。

無事にセーブ出来た事を確認し、電源を切る。

ちらりと振り向くと、後ろにはいまだ熟睡している楊ゼン。

さっきから迫力ある画面や戦闘シーンで「ぬおっ!?」と叫んだりがたがた体を揺らしたりと

なかなか騒がしくしていたのだが、日頃の疲れのせいかまったく起きる気配がない。

それもそのはず、確かに太公望も洗濯など出来る限りは手伝っているのだが、

楊ゼンは毎日の激務の上に家事も完璧にこなしているのだ。

しかしどんなに彼がタフネスであろうとも、疲れがたまらないはずがない。

これで子供がいたりしたら過労死確実だろう。

テレビの電源は消され、部屋の中から音が消える。

いや、ただ1つ楊ゼンの寝息だけが静かな部屋に響く。

太公望は急にやる事を失い、手元にあった本を手繰り寄せる。

彼が半分ほど読んで犯人がわかってしまい、読むのをやめた推理小説。

そのあとで太公望が最後まで読み、犯人を楊ゼンに聞いたら見事に言い当てた。

そんな完璧な彼が、引き篭もりのように毎日家にいる自分(職業のせいです)のどこが好きなのだろうか、と太公望はたまに考える。

完璧な彼は完璧な自分が好きなのだろうから、口には絶対出さないけれど。

「・・・早く起きんかのー・・・・・。」

わざわざ起こすのは忍びない。

だからと言ってすることもなく、ぼーっと過ごすのも嫌だし仕事はなるべくならしたくない。

そういう複雑な思いを胸に秘めながら、太公望はもう一度楊ゼンを覗き込み、

青い髪に手をかける。

丁寧に手入れされた髪はサラリと手から落ち、元の場所へと戻っていく。

それが楽しくて、ぼーっとした顔でその単純な動作を繰り返した。

それでも楊ゼンはよっぽど疲れているのか、寝返りを打つこともなく深い眠りに包まれている。

「・・・・つまらん。」

楊ゼンを起こしてはいけないという気持ちと、楊ゼンを起こしたいという気持ちが太公望の中で争い、そして1人会議の結果

「楊ゼン、楊ゼン。」

起こしてかまってもらう案が可決された。

太公望はゆさゆさと少々控えめに楊ゼンの体を揺さぶる。

「・・・・ん・・・・」

だが、肝心の彼は少し身じろぐだけで目を開けない。

楊ゼンのまったく起きようとはしない様子に太公望はなんだかおもしろくない。

「楊ゼーン?起きないとキスするぞー?」

太公望はからかいを含んだ声で楊ゼンの頬を摘む。

それでも寝言らしき言葉をごにょごにょ言うだけでやはり起きない。

太公望は意を決し、ゆっくりと顔を近づけていく。

楊ゼンの唇まであと20cm・・・10cm・・・8・・・7・・・

(・・・・・それにしても、嫌味なぐらい綺麗な顔だのう。)

きっかり5cmで一旦近づくことをやめ、じっくりと太公望は楊ゼンの顔を見入る。

こんなに近くでじっくりと見る機会なんてなかなか無いんじゃないだろうか。

たっぷり30秒は見つめていただろうか。

「・・・そんなに焦らさないで下さい。起きられないでしょう?」

「へ?」

とっさのことで、動きを止めた太公望にいきなり目を開けた楊ゼンが太公望の

唇に自分から口づけた。

しかも、逃げられないように抱え込むように腕を太公望の腰に回して。

「んっ・・・・・」

薄く開けた唇の中に楊ゼンの舌が当たり前のようにもぐりこみ、太公望のそれとからませる。

楊ゼンは十分に太公望の口を貪り、名残惜しそうに唇を離した。

「・・・・っ!!いつの間に起きておったのだ!?」

太公望は慌てて身を起こし、楊ゼンから安全な距離を取る(笑)

警戒態勢を取る太公望に楊ゼンはいけしゃーしゃーと、

「あなたが僕の体を揺らしたときですよ。」

平然と答えた。

「いえ、揺らされたときはまだ意識がぼんやりしていたんですけど、僕が起きなかったら

キスするって言っていたからそのまま寝たふりを続行したわけですv」

笑顔で説明をする楊ゼンは本気で嬉しそうだ。

「卑怯だぞ楊ゼンっ!!じゃあわしが恥かしい思いをしてキスをしようとしたり

おぬしの顔に見惚れていたりしているところをおぬしは見てたわけか――!?」

「え、見惚れていたんですか?嬉しいなあv」

「・・・・・・・・っ!!」

太公望は楊ゼンの科白から自分が自ら墓穴を掘ったことを知った。

それもそのはず。

楊ゼンは目をつぶっていたため、少しぐらい唇が触れるのが遅くても太公望が

躊躇していると思うだけだ。

それを太公望はパニックのため自らばらしてしまった。

太公望は苦虫を噛み潰したような顔をする。

まずい。これでは楊ゼンの思う壺ではないか、と。

「ね、師叔、僕の休みはあと1日なんですよ?僕ともっとイチャつきたいとか

思いません?」

楊ゼンはいまだ自分の上に馬乗りになっている太公望に甘えるように擦り寄る。

自分の愛する人が自分の上に乗っているという、こんなおいしい状況を

楊ゼンが見逃すわけがない。

太公望は慌てて体を離そうとするが、楊ゼンは慣れた手つきで太公望の体の動きを封じ、

服の中に手を入れて滑らかな素肌に直に触れる。

「ひ、昼間から盛るではないっ!!ていうかここは居間だボケェ!!!」

「そんなこと、考えなくても大丈夫ですって。

当たり前ですがここには僕と師叔しかいませんからねv」

「ギャー!!」

楊ゼンの魔の手から逃れようとわたわたと太公望は体をばたつかせる。

(もうちょっと色気のある声とか出せないかなぁ・・・・。)

必死の抵抗でわけがわからなくなっている太公望の喘ぎ(?)に楊ゼンは心の中で溜息をついた。

しかし彼は手を休めることなく、太公望の胸へと手を伸ばしていく。

その時だった。

ぴっ

(・・・・・・・ぬ?)

聞きなれた電子音。太公望が暴れた時に、偶然足元にあったチャンネルを押したのだ。

『臨時ニュースです。』

ニュースキャスターの一言に太公望の動きがぴたりと止まった。

『総合医療会社のツツラが新薬を開発しました。これはガンの進行を・・・。』

無表情でつらつらと原稿を読むニュースキャスターの言葉を聞いていると、

太公望の顔がしだいに明るくなっていく。

「どけいっ!!!」

「げふっ!?」

げし!!と哀れ楊ゼンは太公望に踏み台にされ、ソファに沈められる。

太公望はというと、パソコンを起動させて待っている間、もどかしそうにマウスを動かす。

画面が映ると軽快なキータッチでどんどんプログラムを起動させ、回線をつなぎ、

画面の数字を睨みつける。

「師・・・・師叔?」

楊ゼンはいきなりの太公望の動きについていけなく、おそるおそる後ろから声をかける。

しかし返事はない。

太公望の目はスクロールしていく数字を追い、ある一点を見つけた。

「・・・・・やっぱり。」

太公望の口元から笑みがこぼれる。それはなにか、いたずらが成功したような笑みだ。

カチャカチャと軽快に何かを打ち込んでいき、電話の横に置いてあった自分の携帯電話を持ってきて、覚えている番号をプッシュし相手を出てくるのを待つ。

「師・・・・・師叔。」

楊ゼンは何か言いたげだが、太公望は電話の向こうの相手としゃべりながら邪魔するなと

楊ゼンを睨みつける。

こうなった太公望はもう止められない。

どうやら大きなヤマが当たったらしく、覗き込んだパソコン画面から表示されるものを見て、

楊ゼンはため息をつく。

これが終わるとしたら明日の夜。

ちょうど楊ゼンの休みが終わる日。

(・・・・どうしてくれるんですか・・・・コレは・・・・。)

楊ゼンは収まりのつかない状態で放置され、うらめしそうに元気に仕事をする太公望を

見つめながら、さらに大きなため息をついたのだった。

 

結局、太公望の仕事が落ち着いたのは次の日の深夜だったことを記しておく。



こんだけです。
っていうのもただ単に寝ている楊ゼンにちょっかいをかける太公望が書きたかっただけで。
勝手に書いたのですがインターネットで株が売り買いできるのかしら?とか思いつつ、
強制終了。楊ゼン不幸。それもこれもただいまエロ書けない私が悪いんです。
くぅ・・・・それもこれもCOMPANYが・・・・。

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