2月22日 バレンタインデーで浮かれていた世間はすっかり熱が冷め、
すっかりいつもの日常に戻っていた。
賞味期限の切れた生チョコレート
「・・・・て、いうか今年ももらえなかったんだよなぁ」
楊ゼンは卓上カレンダーを目の前にして自室の机に突っ伏してしまう。
そんなことをしたって時間は冷酷だ。
やり直しがきくはずがない。
そう、今年も彼は愛しの彼・・・太公望からチョコレートをもらうことが出来なかった。
付き合いだして3年、同棲してから早1年目。となればこの手のイベントは3回目なのだが
太公望はこの手のイベントにはかなり疎い。(ちなみに誕生日はプレゼントが貰えるのでしっかり覚えている)
TVでは毎日のように特集を組むこの時期になるとなんとなく太公望もそわそわしているような気がするのだが、
実際あげているのは楊ゼンであり、太公望からもらったことがない。
太公望はめったに家を出ないのに2月13,14日は何故か両日とも出かけて、
帰ってきたのは日付が変わるか変わらないかという瀬戸際。
自分のチョコレートはかろうじてあげたのだが、太公望はそのまま倒れこむように寝てしまう。
結局、楊ゼンは太公望からの愛のチョコレートはまだ一度も口に入ったことがないのだ。
(これってかなり情けなくないか自分・・・・?)
ちらりと突っ伏したまま机の横の鏡を見ると、なんとも情けない顔をした自分がいて、
さらに落ち込んでしまう。
彼も忘れているのだろうかとその次の日も、またその次の日もどきどきしながら待っているのだが
太公望はまったく気づきもしないし、バレンタインデーから一週間以上経ってしまった。
ここまで遅れて渡すという事もないだろうから、悲しくも今年もだめだったという結論に達した。
(なんか去年もこんなことやってた気がするし)
楊ゼンは大きなため息をついてから気を取り直し、目の前の書類に意識を向ける。
ふと、手元を見ると愛用のボールペンがすでにインクが尽きかけていることに気づいた。
他にもボールペンはあるのだが、このボールペンでないとなんとなく落ち着かない。
(確か予備があったような・・・・・・)
楊ゼンは机の引出しの中をゴソゴソと探るがまったく見当たらない。
しょうがなく、自室を出てとなりの太公望の部屋に入る。
確か、事務用品の予備が太公望の部屋の棚の中に保管されているはずだ。
太公望の部屋は楊ゼンの部屋と違って少々物が散らかっている。
今日は珍しく用事があって外に出ているのだが、普段太公望は一日の半分をパソコンの前で過ごす。
彼の仕事はよっぽど好きかそれとも外に出たくないというものぐさでなければ務めることは出来ない。
太公望はどちらかというと後者だが。
ゴミ箱は近くにあるのだがゴミを出すのが億劫らしく、あたりにゴミやら紙切れやらが散らかっていた。
「えーと、ボールペンはっと・・・・・」
ことり
「え・・・・・・?」
棚を開け閉めしていたら、上から箱が落ちてきた。
きれいに包装された小さな小さな箱。
「プレゼント、かな」
大事な人にあげるような見た事のないそれに、楊ゼンは苦笑する。
何度も言うようだが彼はよっぽどのものぐさだ。
誰かに貰ったものでも興味がなければそのままになっている事が多い。
楊ゼンは見てはいけないと思いながらも、気になって仕方がない。
(・・・・・元に戻したらわからないだろうし)
が、結局好奇心に負けてきれいにとめてあるセロハンテープをはがす。
すると、出てきたのは
「・・・・・・チョコレート」
・・・・・なんだか楊ゼンは無性に悲しくなってきた。
2月14日に出かけた彼は、誰かにこのチョコレートをもらったのだろ・・・う・・か?
(待てよ?)
付き合って3年目、彼の食い意地の張った性格を考えたらこのチョコレートは
貰ったその場で喜んで食べてしまうだろう。
したがってこれは貰い物ではない。もちろん自分用なら尚更だ。そう考えると・・・・
楊ゼンの考えを裏付けるように出てきた宛名の書かれていない・・・いや、書かれていたと思われる
メッセージカードが挟まっていた。
薄く、自分の名前が何度も書いたり消されたりした痕が。
「どうしよう・・・嬉しすぎるかも・・・・」
楊ゼンは緩む口元を隠すために赤くなった顔を思わず手で覆う。
がちゃっ
ちょうど良く玄関の鍵が開けられた音がした。
「師叔っ!!」
彼は愛しの太公望のもとへと部屋を飛び出す。
そう、太公望が恥かしくて渡せなかった賞味期限の切れた生チョコレートを持って。
終わり
バレンタイン(後)小説「賞味期限の切れた生チョコレート」でしたっ
私の考える楊ゼンと太公望の関係はこんな感じなんです。楊ゼンへたれ(笑)
なんかもっと色々書きたかった気がしたけど書いているうちになにがなんだか。
そういや太公望しゃべってないや。
これはバレンタインフリー小説になっていますので気に入った方はコピペしてお持ち帰りください。
ただ、著作権は捨てていないのでHPに載せる場合はBBSかメールで一言お知らせください。
同人誌など商業用はお断りします。
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