アレルギー
「ただいま。」
いつもの帰宅の挨拶をしながら扉を開ける。
しかし返事は無い。
いつものことと思うけど、少々淋しいものがある。
楊ゼンは溜息をつきながら同居人に帰ってきたことを伝えるためにリビングへの
扉を開けようと取っ手に手をかける。
『・・・・・・・・・・・』
中からはテレビの音が。
「・・・・・・いない。」
だが楊ゼンは手をかけただけで扉を開けずに隣の洗面所へと向かう。
ザー
中からは水の音。洗濯機が動いているのか、それとも誰かが水を使っているのか。
楊ゼンはまた取っ手に手をかける。しかしそれきりで扉は開けないで背を向けた。
次は寝室。
音は聞こえない。
楊ゼンは先ほどと同じように取っ手に手をかける。
「・・・・・・いた。」
表情を変えずにいた楊ゼンはそこで初めて微笑を見せた。
躊躇無く扉を開けると、ベッドに胎児のように丸まって眠っている同居人が。
「師叔。」
一言、彼の人の名前を呼ぶ。
すると、呼ばれた同居人・・・太公望はすっ・・・と瞼をあげる。
「・・・・・楊ゼン。」
確認するまでもなく自分を呼んで綻ぶ表情。
寝起きの気だるげな声。
眠そうに目を擦る手。
彼の、全てが愛しい。
「師叔、夕飯用意しますから顔を洗ってきてください。」
楊ゼンはゆっくりと体を起こす太公望の髪を撫でながらネクタイを解いていく。
「・・・・むう。」
目を擦りながら太公望が部屋を出て行った。
す・・・と楊ゼンの中から何かが抜けていく。
太公望が傍にいるという感覚。
のろのろと寝起きの体を動かしながら洗濯機の音が響く洗面所へと足を向ける。
太公望は先ほどまであったぬくもりが消えていることを確かに感じていた。
楊ゼンが傍にいるという感覚。
それはアレルギー
あなたは
私アレルギー
私は
あなたアレルギー
終
新装開店初めての文でした。
アレルギーを持つ人はそこにアレルギーの原因があるのを知らなくても具合が悪くなったり
するらしいです。それの人版。
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