青い、青い空
空の青は至上の青
彼が見つめる先には
彼とともに
ゆっくりと雲が流れていく。
風は北向き。雲は南の空へと消えていく。
眼下に広がるグラウンドではまだソフトボールの試合をやっていた。
『・・・は・・・国に対して軍事的制裁を取ることを明言しました・・・・・。』
楊ゼンと太公望は互いに黙り込み、ラジオから流れるニュースに耳を傾ける。
彼らは授業で教師の眠気を誘う声を聞くよりも、停滞する事の無い世界情勢に耳を傾けるほうを好んだ。
「・・・・・終わらないのう。」
「・・・・・終わりませんねえ。」
太公望が独り言のように呟くと、楊ゼンも答えるように呟く。
いつまでも続く紛争。
どこかが停戦したと思えばすぐにどこかで始まる。
無限につながる憎しみのループ。それはメビウスの輪のようだ。
ふいに太公望が立ち上がった。
一歩踏み出し、昇降口の端に寄ると、太公望の目の前は空でいっぱいになる。
「のう楊ゼン。」
くるりと振り向いた太公望が楊ゼンにイタズラっぽい表情を見せる。
「はい?」
楊ゼンは不思議そうに返事をすると、太公望は大きく伸びをした。
「不思議ではないか?戦争している国も、飢餓に苦しんで1日に何人もの子供が
死んでいく国もこの空でつながっておるのだ。」
「・・・・・・・!!」
楊ゼンは太公望の言葉に息を呑む。
「戦争に勝つ国、負ける国。余った食べ物を簡単に捨てる国、一匙の麦さえもままならない国。
みんなみんな同じ空を見ているのだ。」
いつもの、チャイムが鳴った。
がたがたと机をたつ音が、人の喧騒が。
ふいに時間が流れ出す。
「例え、世界のどこにいても同じ空の下だ。だが神ほど不平等なものはいない。
ある意味、ヒンドゥー教のカースト制度は正しいのかもしれんのう。」
「・・・・・そうですね。」
楊ゼンは飲み込んでいた息をゆっくりと吐き出す。
「僕たちがこの地球にいる限り、どこにいても同じ空の下でしょう。だけど・・・。」
「それでも僕はあなたと共にいつまでもこの空を見ていたい。」
いつのまにか、次の授業が始まっていた。
この時間、体育のクラスは無いらしく、グラウンドは静寂に包まれている。
楊ゼンが見つめる先には至上の青に包まれた太公望。
「・・・・・おぬしはこれからどうするのだ?」
「・・・・・え?」
雲に隠れていた太陽が姿を見せ、太公望が光に包まれる。
彼の表情が、見えない。
「そうですね・・・とりあえず医者志望・・・・ってところですか。」
楊ゼンは内心の動揺を悟られないように必死に表情を作る。
なにを言われるのか、まったくわからなかった。
「わしは弁護士になる。あと1年弱でわしとおぬしの道は別れ、会う事もままならなく
なるだろう。医者も弁護士も忙しいからな。だが・・・・。」
ふと、言葉が途切れる。
彼の表情は分からなかったが、楊ゼンはなぜか太公望が微笑んだことを知った。
「わしはいつまでもおぬしと共にいるよ。おぬしが望むなら、な。」
楊ゼンは太公望の言葉にゆっくりと表情を和らげていく。
「なんならおぬしが病院を建てたとき、顧問弁護士にでもなってやるよ。
医療ミスだろうが臓器密売だろうが5年くらいは懲役減らしてやるから。」
「そんなことしませんってば・・・・・。」
冗談めかした物言いに、楊ゼンの体の力が抜けた。
(ああ、この人はどうしてこんなにも僕を救ってくれるのだろう。)
気が狂いそうなほど消えない記憶。
耳を塞ぎたくなる無慈悲な現実。
それでも今ここに自分があるのはあなたのおかげ。
彼と過ごすこの時間が終わるまで、あと9ヶ月15日。
そして彼らが再び出会うまで、
あと10年3ヶ月と4日。
終
至上の青、終了しました。
無理矢理終わらせたような感じがするのは気のせいです。
この話は「アレルギー」とはつながってないです。別の世界ってわけでし。
ちなみに「アレルギー」は次の封神小説とはつながってますけど。
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