灼熱!螺旋陣
ウチの実装石がまた子供を産んだ。
といっても、妊娠直後に腹をボコボコに殴ってやったので、
出てきたのはグチャグチャの仔実装の残骸ばかりで、
生きているのは蛆実装が2匹だけだった。
「デスデスゥー」
こんな出来損ないでも可愛いらしく、
親実装石は抱き上げて、蛆実装の粘膜を舐め落とそうとする。
だが、俺はすぐにそいつを取り上げる。
この実装石にまともに子育てなどさせる気はない。
「デスゥー!デスゥゥー!」
親実装石がガラスケージの中で泣き喚く。
ガラスに顔を押し付けて、ブサイクな顔が余計に見苦しく変形していた。
いいかげん学べよ。
お前の子供は使い捨ての玩具なんだよ。
「レフ?」
俺に摘まれた蛆実装達は事情をさっぱりわかっていない。
顔を突付くと頬を摺り寄せて甘えてくる。
「レフレフー♪」(だっこしてレフ♪)
「テフー♪」 (なでなでしてレフ♪)
リンガルを見ると、甘ったれなセリフが表示されていた。
蛆実装のクセによく喋る奴らだ。
適当に腹を撫でてやった。
「レフフゥーン♪」(おなかプニプニいいレフゥ♪)
尻尾をぴこぴこと振って大喜びだ。
以上で「上げ」は終了。
レフレフとはしゃぐ蛆どもはさておき、こっちも準備に取り掛かった。
テーブルの上には大型灰皿と蚊取り線香。
あとは針金を曲げて、蚊取り線香を乗せる支えを作った。
灰皿に針金でやぐらを組み、その上に蚊取り線香を乗せる。簡単なものだ。
作業時間は10分程。
これで蛆実装用ステージの完成だ。
蛆実装を線香に乗せた。
「レフ?」
渦巻きの上でキョロキョロしていた。
隙間だらけの足場は居心地悪いようで、
なんとか落ち着く場所を探そうと、蛆どもはもぞもぞ動く。
「テフテフ」「レッフ!」
線香の隙間は蛆実装が落ちるほど広くない。
しかし線香の上も安定して乗れるほどは広くない。
小さな手足を不器用に動かしながら、懸命に線香の上に登ろうとするが、
隙間にハマってなかなか抜け出せないようだ。
「テフゥ…」「レフレフー」
こちらを見上げ蛆どもが鳴く。
助けてくれと要求しているのは明白だ。
「デッスー!」
親実装石が騒いでいる。
蛆どもとは対照的に、ガラスにへばり付き必死の形相で泣き叫んでいた。
その目の前を衝立で塞いでやる。
「お前には見せてやらんよ。頑張って想像しな」
「デズゥゥゥゥウ!」
親実装石がガラスを叩いて泣いた。
――それじゃ始めようか。
蚊取り線香を半分ほどの長さに折った。こうしないと火の回りが遅すぎる。
蛆実装達の目の前で線香に火をつけた。
「テフー?」「レフレフ♪」
状況のよくわかっていない蛆姉妹。
赤く光る火種を見て、何やら喜んですらいる。
一匹をピンセットで摘み上げた。
火種に近づけてやると、尻尾を振ってますます喜ぶ。
「レフレフ♪」(きれいレフ♪)
ご機嫌なところ悪いが、今日は火の怖さを勉強してもらうぞ。
蛆実装を火種に押し付けた。
「レピャァァアー!」
軽くジュッと焼ける音と匂いがしたところで、すぐに離してやる。
次に、もう一匹にも同じ目に遭ってもらった。
「レフゥー…」「レピュピュ…」
蛆姉妹は火傷の痛みに泣いている。
糞もぴちぴち漏らしているようだ。
これで火の熱さと怖さは、身をもって理解できただろう。
「デズゥゥウーッ!デズズゥーッ」
親実装がガラスをバンバンと叩いて暴れている。
蛆の悲鳴と肉の焼ける匂いで、何が始まったか理解したようだ。
この実装石は普段は無気力にヘタリ込んでばかりいるが、
子供が殺される時だけはこうして元気になる。
正直うるさいとは思うが、大事な素材提供者だ。
騒ぐくらいの権利は認めてやる。
そこで子供の悲鳴を満喫してくれ。
蚊取り線香の上で、蛆姉妹は身を寄せ合って震えていた。
その目線は煙を昇らせる火種に釘付けになっている。
「レフ…」 (ママ…)
「…テフテフ…」(怖いテフ…)
このまま変化がないのはつまらない。
蛆姉妹の片方を捕まえ、火種の前に置いてやった。
「レピー!」
顔の至近距離にある熱源に怯えて蛆実装が泣きだした。
小さな手足を懸命に動かして、線香の上を後ずさりしていく。
コイツは平均的な蛆実装よりも身体が小さい。
線香の隙間に嵌まれば、抜け出すにも苦労するほどだ。
「レフ!レフ!」
元々後退には不向きな身体だ。
蛆実装は不器用な動きで線香の上を後退していく。
少しづつ蛆実装と火種の距離が開き始めた。
順調に逃げられても面白くない。
余った線香を適当な長さで折り、火をつけた。
焼け火箸の簡易版、火箸線香とでも呼ぼうか。
そいつで後ずさる蛆実装の尻を突付いてやった。
「レピャッ!」
予想外の方向からの熱さに酷く驚いたようだ。
身体が跳ねた拍子に蛆実装がバランスを崩した。
そのまま線香の外側にずり落ちていく。
――世話の焼ける奴だな。
俺は蛆実装の身体を支えてやった。
火箸線香でだ。
「レヒャァアアアー!」
支えられた腹が焼かれてチリチリと音がする。
焦げ臭い匂いが上がってきた。
「レヒュヒュ!レヒュヒュ!」
蛆実装がぴこぴこと全身をよじって踊った。
なかなかに可愛らしい。
暴れる蛆実装に線香の先を押し付けながら、元に戻してやる。
線香の上にひっくり返った蛆実装の腹は、すっかり焼け爛れていた。
「レヒー…レヒー…」
舌を突き出し、涙を流し、いっぱしに苦しんでいる。
だが、のんびりしている暇はない。
蚊取り線香の火種は蛆実装の間近に迫っていた。
ジュッという音がして蛆実装の頭巾が焦げた。
火種が蛆実装の転がっている位置まで到達したのだ。
「テフッ!」
蛆実装が仰向けのまま逃げ出そうとした。
しかし隙間に嵌まっているせいで、身体はちっとも進まない。
それどころか身動きのたびに、火種に頭を擦り付けてしまうせいで、
みるみる頭巾がボロボロになっていく。
「レフッ!レフッ!」
耳を焼き焦がされながら蛆実装が必死にもがく。
頭を炙られ錯乱しているのか、身体をよじらせるだけで、
逃げようとする動きではなくなっていた。
少しサービスしてやることにした。
仰向けになっている蛆実装の腹を軽く撫でてやった。
「レフ♪」(ぷにぷにレフ♪)
尻尾を振って喜んでいる。
しかしその一方で、火種も頭を焦がしている。
「レピャ!」(あちぃレフ!)
熱さに蛆実装が悲鳴を上げた。
また、腹を撫でてやる。
「レフゥ♪」(ぷにぷにレフ♪)
喜んでいる。
今度は火種に押し付けるように、強めに撫でてやった。
「レフフッ♪テヒャァッ!レリュゥ…レピッ!」
(ぷにぷにしテフ♪あちッ!おなかぷに…あちぃっ!)
ぴちゅぴちゅと糞を漏らしながら、
蛆実装は泣きながら喜び、怯えながらはしゃぐ。
頭が単純なせいか、素直な反応だった。
火種はゆっくりとした速度で、蛆実装の身体を焼きながら進む。
蛆実装の頭をじっくりと焼き、今は胴体部分に差し掛かるところだ。
「テヒー…テヒー…」
顔半分が焦げ、目も白濁した蛆実装は、もう逃げようともしない。
チリチリと身体を焼かれながら、荒い息を吐くだけだ。
もう腹を撫でてもほとんど反応しない。
――頭から焼いたのは失敗だったか。
こんなチャチな生き物でも頭部は重要らしい。
腹に火箸線香を押し付ける。
「テヒ…」
僅かに身じろぐ程度のつまらない反応。
いや、小さな手足が弱々しく動いている。
抵抗のつもりか、許しを乞うているのか、それともただの脊髄反射なのか。
「レフ…」
蛆実装が涙を流して俺を見ていた。
焼け潰れた片目の分の涙のつもりか、舌を突き出した口からも涎がこぼれていた。
だが、泣き方がまだまだ足りない。
動いている手足を一つづつ焼き潰していった。
同時に背中側からも線香にゆっくりと焼かれ、
蛆実装が小さな痙攣を繰り返す。
「レヒョ」
蛆実装がおかしな声を上げた。
尻からぴちゅぴちゅと糞が迸る。
それきり蛆実装は反応しなくなった。
最後に糞をたれて力尽きたらしい。
焦げた蛆実装の死骸を線香の上から退かした。
もう一匹の蛆実装を見た。
「…レピュルルル〜…」
寝てやがる。
姉妹がすぐそばで焼き殺されていたというのに、
その間かまわれなかったコイツは、
退屈のあまりお昼寝タイムに突入してしまったらしい。
さすがは蛆実装、頭の悪さは折り紙付きだ。
しかし残念ながら、ウチの飼育方針はスパルタだ。
「起きろ蛆虫」
火箸線香で尻を突いてやった。
「レフッ!」
蛆実装が熱さに跳ね起きた。
「レフ?レフ?」
何事かと周りをキョロキョロと見渡している蛆実装。
自分の出番が来たことを理解できていない。
尻をまた突付いてやった。
「レピィ!」
蛆実装がもぞもぞと逃げ始めた。
コイツは身体が大きい。線香の隙間に嵌まってもすぐに抜けだせる。
――だから追い回して遊べるわけだ。
「レフー!レフー!」(あついレフ!やめてレフ!)
蛆実装が泣きながら逃げまわる。
俺が尻に火箸線香を押し当てまくるからだ。
ジュッと焦げ跡が付くたび、糞を漏らして蛆実装が泣く。
追い立て続けるうちに、蛆実装の服は後ろ部分がボロボロに破れ、
尻が丸出しになってしまった。
「レピー!レピー!」(ママー!ママー!)
次々と増える根性焼きに、蛆実装が泣いて親を呼ぶ。
「デスゥゥー!デスゥー!」
衝立の向こうで親実装石が応えるように泣き叫んでいた。
しばらく蚊取り線香の上で蛆実装を追い回していたが、
その線香も残り少なくなってきた。
蛆実装の感覚では畳一畳分ほどの広さだろうか。
今、蛆実装の眼前には蚊取り線香の火種。
そして背後には火箸線香。
引いても進んでも火傷が待っていた。
「レフゥ!」
顎を炙られ蛆実装が呻いた。
思わず後ずさると今度は尻が炙られる。
「レヒャア!」
それならば横にと頭を振れば、額に火箸線香を押し付けられる。
蛆実装は周囲を完全に固められていた。
「レピュー!レピュー!」(ママー!ママー!)
「デスゥー!デスゥー!」(やめてデス!やめてデス!)
蛆実装が親を呼んで泣き、親がそれに応えて泣く。
鬱陶しい親子愛の表現だ。
「テフッ!」
蛆実装が気合とともに、大きく身体を仰け反らした。
尻尾と頭を持ち上げ、熱さから逃れようというつもりのようだ。
なかなか見事なシャチホコ立ち。少々感心した。
「レフ…、レフ…」
しかし相当な無理のある体勢なのだろう。
蛆実装の身体がぷるぷると震えている。
頑張っているのでご褒美をやることにした。
仰け反らせている腹を撫でてやる。
「レフーン♪」(おなかぷにぷにレフ♪)
喜ぶ蛆実装。
その瞬間、力が抜けたのか線香の火種の上に倒れこんだ。
「レッピャァアアー!」
顔を焼かれた蛆実装が絶叫した。
「デズゥーッ!デデズゥーッ!」
その声に危機を感じた親実装石の声も跳ね上がる。
「レヒュ…」
蛆実装がまた身体を持ち上げた。
そこで俺もまた腹を撫でてやる。
「レヒュ!レッピャ!」(やめてやめてレフ!)
蛆実装が涙を流して激しく首を振った。
――そんなこと知ったことか。素直に気持ちよくなれ。
腹をなでなで。
「レッフ♪レッフ♪」(ぷにぷにレフ♪ぷにぷにレフ♪)
倒れる蛆実装。
「レッピィィイイー!」(あちゃあレヒィー!)
なかなか面白い。
俺は蛆実装の足場部分が燃え尽きるまで、腹を撫でてやった。
「テフ…テ…」
蚊取り線香が燃え尽きたので、蛆実装は灰皿の上に横たわっている。
体中が焦げ跡だらけだが、外傷は火傷だけのせいかまだ生きていた。
蛆実装の腹を撫でてやる。
「テフテフ♪」(きもちいいテフ♪)
今は熱に焼かれることがないため、大はしゃぎだ。
また糞をぴちょぴちょと漏らしていた。
コイツはまだ俺の「おなかぷにぷに」を舐めているようだ。
また蚊取り線香を折って火を着けた。
「レフレフ♪」
腹を撫でてやるたびに総排出口が開き、糞が漏れる。
その総排出口が開いた瞬間を狙い、燃えている線香を突っ込んだ。
「テヒュゥゥウウウー」妙な声を上げて蛆実装が固まった。
「レ…レレ…」
舌を突き出し呻く声に混じって、チリチリと体内の焦げる音がした。
腹が透けてぼんやりと赤く光っている。
不覚にも少しキレイだと感じてしまった。
光る腹を撫でてみると、いい感じに暖かい。
「レピィ!レピィ!」(あち、あちレピ!)
口から煙を昇らせながら蛆が泣く。
かまわず腹を撫でてやる。今までで一番優しい手つきで。
「レフヒィィィー!ピャアー!」(やめてぷにぷにやめてピャア!)
「レッフフー!レッピャアー!」(ぷにぷにあちぃピャアー!)
煙を吐き、蛆実装がのたうつ。
大粒の涙を溢れさせ、泣き叫ぶ。
腹の中から糞の水分が焼けるのか、ジュウジュウと音がする。
満遍なく体内が焼け爛れるよう、丁寧に腹を押してやった。
「テテテフゥーッ!テテテフゥーッ!」
(おなか!おなかぷにっ!ぷにっ!死んじゃうテフゥーッ!)
どうやら大好評のようだった。
「レフ…」
腹の表面まで黒く焦がし蛆実装が呻いていた。
線香に炙られてすぎて、もう涙も涎も流れない。
呻き声が消えた。
とうとう死んだらしい。
先に死んだ姉妹と同じように、水分が抜けてパリパリの死骸だった。
衝立をどけて、姉妹の死骸を親実装石の見せてやった。
「デ…デ…デスゥゥー!」
かろうじて原型をとどめるその姿を見て、親実装石が泣き崩れた。
その目の前で黒焦げの死骸を指で押しつぶす。
死骸はボロボロと崩れ、粉々になって床へ落ちていった。
「デ、デギャアアアアーッ!」
ガラスに顔を張り付かせ親実装石が号泣する。
「ありがとさん、今回はけっこう楽しめたよ」
「デギャッ!デギャアアア!」
「人の話聞けよ」
「デブゥッ」
泣き喚く実装石の顔面をブン殴る。
目の周りを陥没させて実装石がおとなしくなった。
「託児した子供をダシに押しかけてきたくせに、今更なんだってんだ」
「デス、デスデス」
「飼い実装石になれてよかっただろ。感謝しろよ」
「デスデス!デスゥ!」
いろいろ喋ってはいるが、実際のところコイツと会話をしてもつまらない。
今日はもう寝ることにした。
ただし実装石には起きていてもらおう。
このまま寝ても、コイツはいい夢は見れないだろうから。
俺は実装石の水槽に水を注ぎ込んだ。
「デスゥー!デスゥー!」
実装石の喉元辺りで止めてやる。
これで眠くなっても休むことは出来ない。
今夜はゆっくり子供の死を悼むがいい。
俺は実装石の部屋から出て行く。
「…デスン…デスン…」
手元のリンガルを見た。
(あの時、ニンゲンに子供を預けなければ…ワタシはバカデス…)
深く後悔した実装石の泣き声。
俺の大好きな泣き声だ。
今日は本当に気持ちよく眠れそうだ。
ありがとう、実装石。
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