音読の時



一斉に空気が振動する
街で
森で
荒野で
海で
砂漠で
聖典の音読の時 別世界の時
聖典の言葉は 空気の粒子を揺らし続ける

世俗の世界は 姿を消し
精神の中に 一種の詩を刻み込み
一体となる時間

大勢で音読し
導きを覚え
孤独な者も
孤独を感じない
身を蝕む孤独は 一切
感じない

牢獄の中で
逃亡の中で
漂流の途中で
放浪の途中で

暗い中でも 森の中でも 海の上でも 砂漠の上でも
孤独を感じない
この時だけは
持っている聖典のお陰で 覚えている一節のお陰で

導かれ 音読を続ける
終わりの時まで
孤独を感じ始める時まで


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