一瞬の名画
目の前に枯れた葉を落とし
語りかけてきた
「私を見て」と
注目された事の無い 一本の木
この偶然の時 この時だけは勝ち誇り
今年最後の緑を
私に見せつける
美しく 光で着飾り
風と緩やかに 踊りながら
誰もいない道
勝ち誇れない その無意味の木は
この場 この時だけ
日光の中にいる 絶好の時だけ
自慢げに見せつけた
せめてこの時だけは
鮮やかな一瞬の時だけは
視界を額縁とした
木は
名画になる
勝ち誇る木を描いた 名画となる
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