香りと共に
不思議な香りと共に
僕に不意にささやいてくれる
「さあ、いらっしゃい」って
でも
見ようとしても
見えない
普段あれだけ見える目もこの時は
何も見えない
触れようとして
触れられない
手はこの時には
切断されている
走って走って
後先考えずに飛び跳ねても
乳房に少し触れただけ
二人とも何も動いていないのに
目が見えたら
もういない
もういないから
もう触れられない
空しさを
代わりに
抱くだけ
でも僕は
ささやきと香りを待っている
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