二人の少年が吹雪と酷寒の苦痛の中、身を寄せ合い、歩いています。寂しげに歩いています。 まだ、二人の帰るべき家には着きません。 ポツポツと、家明かりはあるものの、その全てが彼らが帰るべき家のものではありません。 ただただこの少年達は歩いています。泣きながら歩いています。 寂しさと不安と空腹のあまりに。 この兄弟は父からのおつかいの帰りでした。一升のお酒を割らないよう割らないように抱きかかえ、足を滑らさぬよう注意深く歩きます。 今来た道をたどれば、いつもの道を道なりに帰れば、二人には暖かい部屋とご飯があります。 寒いのは一瞬の事、兄弟は行きます。 でも、帰れません。 吹雪の中を進んでいったためです。 帰れません。 ひどい雪で道はわかりません。道から人はいなくなり、行き交う車もいなくなり、冬の空気より冷たい無言の明かりがいくつもぼんやりと灯ります。 それだけです。 彼らの向かう道しるべではありません。 夜はどんどん暗くなり、空気は冷え込みます。雪は二人の体を包みます。寂しさは募ります。 それらは二人に不安しか与えません。 助けはありません。 助けてもらう知恵もありません。ただ、その電灯の他人の玄関を叩くだけでよいのに、二人はしないのです。 そんな勇気も知恵も無く、ただただ歩くのです。 遠い遠い兄弟の家に向かって。 もうぜんぜん違う場所に来ているのを、二人は知っています。 もう何キロも歩いているのに、二人の家には着かないのですから。 帰る事ができないのですから。 寂しさは言いようが無く、二人はわんわんと泣き続けながら、誰の何の助けはないまま吹雪は強さを増したのです。 一升瓶は凍っていません。お酒とは凍らない物なのです。 兄弟と違って。 兄弟と違って、雪の中埋もれていても凍らず、そのままなのです。 一升瓶を抱いたままの兄弟と違って。 けなげにも胸に一升瓶はありました。 凍りついた体の中にありました。 |