王様は宣言します。 「我が国の自然という自然を守らせよ」と。 なぜ王様がこのような宣言をなさったのかと言いますと単純に悲しくお思いになられたからです。 王様の元に届く手紙には、木々が痛々しく切られる挿し絵や、大切な動物たちが、絶滅してゆく様子が書かれていたからです。 それに王様は心を痛めました。 ですから自分の力が及ぶ限り自然を守ろう、そう決心をなさったのです。 しかし、半年経っても一年経っても似たような手紙ばかりが届きます。 明らかに木々は減り続け、動物たちは次々に姿を消してゆきます。 王様は我慢できず自ら兵隊を引き連れて国中を歩き回ります。 そうしましたら、多くの人々は王様のいいつけを破り、森を燃やしては炭を作り、時期を考えもせずに動物を狩っていたのを見たのです。 王様は怒りのあまり、いいつけを破った人たちをみんな牢屋に入れてしまいました。 牢屋に入れられたら最後、苦しい労働がまっています。苦しみだけが待っています。 牢屋に入れられる人たちは許しを請いましたが、王様はそれを聞きませんでした。 ですが、手紙には似たような内容が続きます。 まだ、森や動物たちはいなくなりつつあるのです。 王様は学者たちを呼び、何故いなくなりつつあるのかを聞きました。 学者たちは、 「農業のためです。農業をする時、畑を広げます。それは森を切って広げるのです。森を燃やして広げる場合があります。まだこの国は畑を広げるのを勧めています。これを止めてはどうでしょうか」 と言いました。 王様は早速その通りのおふれを出したのです。 何も考えずに。 手紙には木々が切られるという手紙も、動物がいなくなったという手紙は来ません。 ただ、別の手紙が来ます。国民が餓えているという手紙です。 畑を広げることは増え続ける人々の胃を満たすための物、必要な事だったのです。 ですが、王様はかつての様な手紙が来ない事に気を良くし、その訴えを無視します。 それでも、王様の元に森が減っているという手紙が来ました。 何故でしょうか。それは人々がやむなく、生きるために森を切る、そのためにでした。 寒い冬。暖房は必要です。 増え続ける人々は凍え死なないために森を切るのです。 生きるために森を切るのです。 王様はそんな人のそんな主張を無視し、国外へ出しました。牢屋はもう満杯だからです。 国外へ出された人たちは行くあても無く、食べ物も無く、やがてみんな死にました。 王様はまたさらにおふれを出します。 未だ無くなりゆく自然と動物たちに泣き出すような悲しみを覚えられ、おふれを出します。 全ての人間は国外へ出ろ、という非情なものでした。 もう学者たちの意見も聞きません。 自然を守るために人間の事を何も考えなくなっていったのです。 王様は南国の別荘でゆっくり過ごしましたが、国民は隣国へ追い出されました。 この国から一切の人はいなくなり、自然を荒らす者はいなくなり、こうしてようやく森は回復し、動物たちも増えたのです。 隣国の環境を犠牲して。 人々が移り住んだ、隣国の自然を破壊して。 急に増えた人口に隣国の自然は対応できなかったのです。 王様はそれには何の関心も抱なかったのでした。 |