子供が火にくべられていました。 食べられるために、火にくべられていました。 その子の母は、その前にたたずみ、無表情でいました。 あまりの餓えに、子供以外の物が無くなってしまったためです。 服も枯れ木も何もかもを食べ、小さな小さな子供だけが食べられる物として残ったのです。 母は慈しみ深く、自分の食物をいくら事欠いても子供に食べさせていました。 2日も3日も何も食べていなくても母は子に食べさせたのです。 でも、それも限界がきたのです。何も食べる物が無くなり、二人は病気になり彼女の子供は痩せこけて死にました。 二人は痩せ、口にしたのは水の他に土と砂だけ。 子供の体は土袋の様な感触しかありません。 生きている者の体をしていませんでした。腹と頭ばかりが大きい、空腹に苦しみ続けた生き物の外観でした。 涙が出ます。 こんな姿になってまで、生き続けていたのですから。 悲しすぎる世界に生まれ、今の今まで生きていたのです。 母の慈悲に勝る、この世の無慈悲に負けてしまった子へ、母は泣きました。 せめて、安らかに永遠に眠ってもらうために、土を掘ろうと思った時です。 唾液が出てきてしまったのです。 餓えは、人を化物にします。 生命の危機は生き物を狂わす物ですが、飢餓はどんな賢者でさえも鬼になるのです。 子の慈悲深い母も例外ではなかったのです。 哀れむべき事に、母は地獄の餓鬼となっていました。 子は火にかけられます。 手馴れた手つきで点けられた火はぱちぱちと声を出し、その子を覆いました。 次第に食べやすくなっていきました。 しかし、喜びはありません。 泣き出しました。 この自分と子供の境遇があまりにも卑しくこの世で最も下等な生き物としか思えてきたのです。 彼女は頭を地面に叩きつけ、慟哭しました。 目の前には黒い炭と灰だけになりました。 結局、子供の火葬になりました。 母であった彼女はちゃんと埋葬しました。 生まれ変わるのであるのなら、食べ物がたくさんある所に生まれるのを願って埋葬したのです。 |