色彩の経典
誰も来ない
無縁仏墓に花が咲いた
手入れもされない場所だからこそ
花が咲く
草の芽を抜く者は誰一人として
いないから
花は咲いた
燃やされもしなかった うすい土の下の死者は
成仏できない
この時が来るまで
経は読まれなかったから
花の季節
花々の経典を待っている
仏への触媒を
色彩の経典を
綺麗な雑草の
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