会社帰り、電車の待ち時間にぶらりといつものCD屋に寄った。
好きな洋楽のコーナーを眺め、新作アルバムをチェックした。 ふーん。変わり映えしない。その時ふと目に止まったCDがあった。 「セクシャル イマジネーション ミュージック」と題された今まで見た事もないCDだ。 手に取ってみる。タイトルだけで、これといった説明もない。 棚に戻しかけたが、ちょっと考えてレジに持っていった。 青白い顔の陰気な店員に、このCDについて質問しようかと思ったがやめた。 どうせ何もわからないだろう。 「お買い上げですね。」 店員は興味なさそうに言った。 家へ帰ってさっそく聞いてみた。驚いた。これは・・・!!なんという音楽。 俺は、すぐにヘッドホーンに切り替えた。狭いながらも俺には書斎が ある。それでも家族に聞かれる事を反射的に怖れたのだ。なぜなら、 その音楽は、今までの概念を越えたものだったのだ。 あくまでも音楽なのに、どこまでもセックスを想像をさせるものだった。 俗に言う濡れ場の録音などという下品なものではなく、音楽でありながら 脳に直接セックスイメージが直撃してくるというものだった。 アダルトビデオのように視覚に訴える事もない。 イヤホーンで聞いていて窓越しに人と目が合うと、思わず目を伏せてしまう。 これまでの体験が、音楽によって再現されるまったく新しい感覚であった。 ひととおり聞き終えると腰が抜けたような脱力感に襲われた。 何だこのCDは・・・。 俺は、CDをその辺に置き、妻と中学生の娘のいる居間へ戻った。 そしていつのまにか、うかつにもCDが紛失している事に気付かなかった。 ある日、俺が帰宅した途端、電話が鳴った。妻は夕食の準備をしているので俺が電話を取った。 「もしもし○○中学です。お宅のお子さんの担任ですが。娘さんが 学校に不要なものを持ってきていて・・・。あのぅ、CDなんですが・・・。」 先生。先生も聞いてしまったんですね。 |