火星祭りの日。今年の山車は、クジラに決定。 祭りは、地球から移住してきたことを忘れないために行われ、毎年地 球の動物をテーマに山車が決定される。 去年選ばれた動物は龍だった。しかし龍の資料が少なく 実行委員会は大変苦労した。爬虫類ということは、わかったのだが、住んでいる場所が水底か雲の上かがわからなかったのだ。その点、今年のクジラはやりやすい。 実行委員会は満場一致でクジラの住みかは空という事に決定した。 クジラの資料はすべて青いバックである。地球の空は青いという。他にも貴重な情報があった。 哺乳類最大の動物であるという事、流線型の体。大きな体には空気が詰まっていたに違いなく、流線型の体は風の抵抗を受けにくい。風を切って進むのに最適な体という訳だ。 そして祭りの時。 巨大なクジラは火星の空に浮かんだのである。 「こうやって地球をしのぶ日なんだよ」 「うん。父さん。これが地球の景色なんだね」 「そうだよ。よく見ておくといい。私達はこういう景色の星から移住してきたんだ」 |