「バァちゃん、また地球のお話して」 「坊は、好きじゃのう。聞いたら寝るんじゃよ」 「うん」 「私らの故郷の地球にはな、月という衛星があったのじゃ」 「ひとつしかないの?火星にはフォボスとダイモスがあるよ」 「ああいった岩石のかたまりとはまったく違うのじゃ。もっとそれは美しいまんまるなのじゃ。太陽のようなまる」 「太陽のような?」 「見かけ上の大きさは同じだったな」 「ふぅん。まんまるじゃなくても、ふたつある方が格好いいよ」 「月のすごい所は、なんと毎日かたちが変わるのじゃ」 「うっそぉ」 「まんまるになったり、それがだんだん欠けて細くなって、最後にはなくなってしまう」 「なくなっちゃうの? で? どうなるの?」 「また細いのが出てきて毎日少しずつ太っていき、またまんまるになるのじゃ」 「魔法みたい。フォボスとダイモスもまんまるで毎日かたちが変わったら楽しいのに」 「魔法のような美しい夜。それが地球の夜じゃ」 「バァちゃんは、見たんだね、魔法の夜」 「ずっとずっと昔、若い頃にな。もうおやすみ、坊」 「おやすみなさい。誰かがフォボスとダイモスに魔法をかけてくれますように」 |