火星探索第五次探検隊は、青い星の方角を目指していた。 第四次探検隊の生還者の報告を確かめるのが目的である。 報告と言っても正式のものではない。十数名いた隊員のうち、ただひとりの生還者の死の間際の言葉である。 「青い星の向こうに浮く岩がある。入ると帰って来られなくなる」 まもなく探索機は目的地を探し当てた。 謎だらけである。 まず青い星。地球に似てるが地球ではない。 それと浮く岩山。近づくとゆっくりと降りてきて入り口をみせた。まるで誘うように。 隊長は連絡係をひとり残し中へ入ることにした。 「お帰りなさい。あなた。子ども達もさっきまで起きて待っていたのよ。あなたのお誕生日ですもの」 「おめでとう。難関の宇宙学校に一発合格だね」 「あらあら、つまみ食いは、お行儀が悪いわ」 優しい地球の思い出が一気に押し寄せて来た。甘い甘い記憶と共に探検隊員達は岩に取り込まれていった。 連絡係は異変に気付き基地に戻る事にしたが、途中、体調が急変し収容されたときは虫の息だった。 火星。未知の土地には未知の生物がいる事に、移民達は気付いていなかった。 |