期間限定特別企画
みかりんのBMW日記


1999.7.13
今、私は途方に暮れている。
原因は、目の前の黒塗りのBMW。

今まで軽貨物に乗っていた。軽自動車のバス型の車である。使い勝手が良いのである。
絵を運ぶのにも、着ぐるみを運ぶのにも、大勢で海に行くにも。(4人乗りにX人乗せて海に行ったことは内緒です。(笑))
保険が切れて車検が切れた昭和の車はあちこちぼろぼろ。ドアが内側からしか開かなかったり、走行中にワイパーが落ちてひとつしかなかったり。雨漏りしたり。

で、このたび縁あって私のもとに来た車が、よりによってBMW。


1999.7.14
大雨なので今日は、車に乗らずに暮らそうと思った。
しかし、どうしても用事があり乗らないわけにはいかなくなった。
だけど、この雨にBMWの初運転はいやだなぁ。
仕方がないのでこっそり無保険車で出掛ける。
めちゃめちゃ安全運転に徹する。


1999.7.15
左ハンドルなど乗ったことはない。
追い越すときはどうするんだろう。

私は、秋になると趣味で野菜売りに変身することがある。
農家から直接野菜を仕入れて近所に売りさばくのである。
これがとっても面白い。
自分で畑から引っこ抜いた大根、玉葱、白菜、葱、南瓜、等。
軽貨物に何百という大根を詰め込んで国道をひた走る。

あああぁあぁあっぁぁ。BMWでは、そんなこと出来ないではないか。
まず、農家にBMWで仕入れに行けないよ。格好悪くて。はずかしーっ。
近所にも大根売りに行けないじゃないか。格好悪くて、はずかしーっ。


1999.7.16
みんな貧乏が悪いのである。
新しい車を買えない貧乏が悪い〜。
大体わかりにくいじゃないか。貧乏が故にBMWに乗る羽目になってしまった私の不幸。(笑)
貧乏を売りにしてるのにBMWなんかに乗ってしまったら嘘つきになってしまう。

よく見たらフロントガラスにヒビが入っててガムテープが張ってある。ガムテで補強。ここら辺は少し私っぽくていいかも。
でも腐っても鯛。ボロでもBMW。


1999.7.17
いつまでも眺めていてもしょうがない。
意を決して乗ってみる。

あれあれれ?なんだよ。オートマチック車かよ。
私は、いままでいろんな車に乗ってきたからオートマくらい平気だいっ。

エンジン始動!
ぶるるるるるるるる。おおおおおおお。重低音のエンジン音。

発射!じゃなく発車!
あはは、走った、走った。

ウインカー指示!
およよよよよ。なんでワイパーが動くんだよ。
国産車とは、ワイパーとウインカーの位置が逆!ちっ!


1999.7.18
自動改札の駐車場に入れる。
とんでもないことに気付いた。
自動改札は、すべて右ハンドル車用に右側に設置されている。
シートベルトをはずし、右側窓を開け、助手席まで車内をにじり寄り、手を思いっきり伸ばし、券をつかむ。
なにしろ車内は広いのだ。今まで軽自動車に乗ってた者としては格段に広いのだ。

帰りもそう。シートベルトをはずし、右側窓を開け、助手席まで車内をにじり寄り、手を思いっきり伸ばし、券を入れ、指定された金額のお金を入れる。

お釣りが出てくるよりも先に「ありがとうございました。」と機械が言いゲートが開く。

こらっ!お釣りを出してからそういう動作に移るように設定仕直しなさい!


1999.7.19
帰りが遅くなる。
暗い。ライト・・・ライトは何処だ?どこだぁぁぁぁあぁ〜。
ルームランプをつけて探す。ない・・・。無灯火では帰れないよ・・・。
あった。  ほっ。

小雨。ワイパーを作動したつもりでウインカーが作動しているし。


1999.7.20
妙な事に気付く。
BMWを家の前に止めてからお客さんが来ないような。特に生徒さん。
(私は自宅で絵画教室をやっている。)
もしかして良からぬ人が出入りしてると怖れられて人が寄り付かなくなってるとか?!


1999.7.21
追い越しは軽自動車よりも楽な事を発見!
何故ならBMWだからなのである。みんな怖れて避けてくれるのだ。
腐っていてもBMWなのだ。ガムテで補強されていてもBMWなのだ。

思えば、軽自動車での追い越しは大変だった。
軽自動車は、甘く見られるのである。特にダンプカー等の大型車両からみた軽自動車は、 小砂利の仲間と思えるのだろう。ひとつふたつ跳ね飛ばしても良いと思っているのだろう。

それがBMWだと皆さん通して下さる。
私が運転してることには変わりないのに。
少しだけ愉快。ふはははは。


1999.7.22
ガソリンを入れる。覚悟はしていたが1リッターあたり7〜8kmしか走らないのでは・・・!
すっごく燃費が悪いじゃないか!
税金も高いだろうし、車検も高いだろうし。
うっ!


1999.7.23
新しいパソコンを買う機会に恵まれた。
店で選んで車に積んで帰る。
どう見ても、盗難車で盗品を運んでいるようにしか見えないのは何故か?

1999.7.24
せっかくの黒塗りのBMW。これを使って遊ばない手はない。
友人Sに話したら喜んでくれた。

「俺が、サングラスして、シャツの胸をはだけて、金のネックレスをちらつかせて。」
「うん。それじゃ、そのファッションに私も合わせよう。で何処行く?」
「Yの学祭なんかは?」
「きゃはは。最高!Yはねぇ、学祭に使うから着ぐるみ貸してくれってこないだ来たよ。当日着ぐるみ着てるかもね。」
「そりゃぁ、良い。その格好で着ぐるみのYを・・・。」
「うぷぷぷぷ。」

BMWの遊び方講座。


1999.7.25
ぶつけた。

なんかが取れたのでまた差し込んだ。でもまた取れる。
瞬間接着剤で補強。


1999.7.26
昨日、いつも軽自動車を入れていた家の横の隙間にBMWを入れようとして、右側を塀にぶつけたのだ。
軽自動車よりも70cmも幅があったらしい。無理だ。

これじゃ、冬、雪が積もったらこの車はだめだな。雪が積もるまでの付き合いになるんだろうな。


1999.7.27
駐車してあるBMWに乗ろうとして、ついつい習慣で右側のドアに近づく。ハンドルが無いのに気付き、左側に行く。
だいぶ慣れたが、まだこういう間違いはよくする。

でもね、BMWに慣れてしまうっていうのも堕落だよなぁ。


1999.7.28
BMWで近所のスーパーに行く。
ビーチサンダルに穴の開いたジーパンという貧乏スタイルで。
髪はまだらの茶金髪。

まったくもって何者か判らない怪しげなる者となる。


1999.9.26
BMWに乗って2ヶ月。もうすっかりBMWユーザーさ。ふふん。高級車はいいねぇ。うふん。えへん。
さぁ、今日もBMW乗って・・・あれっ?エンジンがかからない・・・。セルが・・スカッ、スカッって・・・。
いつもお世話になっているガソリンスタンドにTELして泣きつく。

「エンジンがかからないんですぅ。」
「ってBMWの?」
「うっ・・・はい・・。」
「あれって何処で買ったの?ディーラーに連絡した方がいいかも。」
「そ・・・それが・・・・ごにょごにょごにょ。」
「うわっ、そうなんですかぁ、そういうのを"訳あり車"ていうんですよ。今日は土曜日だしなぁ。まっ、後で見に行きましょう。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「あぁ、ムロヤさん、バッテリー液からっぽだね。少ないんなら足せば良いけど、こりゃぁバッテリー交換だね。」
「た・高いんでしょう・・・。」(怯えてる。)
「まぁ、来てみないとわかんないけどね。そうだね、月曜日の夕方までに取り寄せってことで。」
「はい。お願いします。ううううう。」


1999.9.27
「交換しときましたんで、もう大丈夫です。代金は22000円に消費税って事で。ツケときますね。」
「あっ、はい。」(しくしく)

あぁ、でも良かった。払う当てはないけれど、また動く。ふふん。バッテリー交換した高級車は無敵だぜぇ。ふふん。


1999.9.28
近所で買い物をし、帰ろうと車に乗り込みキーを差込み、セルを回す・・あれ?・・セルを回す・・あれ??もう一度セルを回す!・・スカッ・・ってそんなぁ。
歩いて昨日のガソリンスタンドへ行く。

「あれ?どうしました?」
「車、また動かない・・。」
「そ・そんなぁ。」
「そこのスーパーの駐車場にある。」
「っていう事は、こりゃぁ、発電系がいかれてる可能性があるな。ちょうど交換してから24時間だし。あのね、こういうことはあるんですよ。いままで動いたのはバッテリーの中の」(ずっと説明が続く。その時は理解したが今はまた判らない整備系の話しが続く。)
「どうしたらいいんでしょう。」
「発電機は、国産車で5〜6万。外車はわかんないなぁ。ちょっと問い合わせてみますね・・・型番が判れば値段出るようですよ。」
「値段が判ってから判断します。」
「そうですね。じゃ、若い者に取りに行かせます。まずはここに持ってきてそれからムロヤさんの家の前まで持っていきましょう。それと最悪の場合台車の手配なんかもしておきましょうね。それからBMWに詳しそうな所に2・3心当たりがあるので電話してみますね。」

所長は忙しそうにあちこち電話をかけ始め、スタンドのおにいちゃんは、赤と黒の先に洗濯バサミみたいなのが付いたコードと、念の為に牽引車を用意してBMWを持って来るべく出掛けていった。

私は、その間、暇なのでそこらにあった江口寿の漫画を笑いながら読んで待っていたのである。("寿五郎ショー"という漫画。知ってる? 江口寿、好きなんだよ。)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ムロヤさ〜ん!車動きましたよ!」
「へ?」
「何でもありませんでした。」
「へ? だって、あのあの。」
「うぷぷぷ。あのね、PじゃなくてDに入っていたんです。ギアが。」

オートマチック車の事を知らない人に説明しよう。
オートマチック車は、スタート時には、ギアをPにしなければエンジンがかからないのである。Pはパーキング。Dはドライブ。ドライブに入れたままエンジンかけたら走り出しちゃって危険でしょう?だから 必ずPにギアを入れてからセルを回してエンジンをかけるの。これは常識なんだよ。だからDではエンジンがかからないように出来ているんだ。ね?勉強になるでしょう?えへ。

「よかったですねぇ、ムロヤさん。」
そう言って所長は、さっきあちこちにかけた電話をまたかけ直した。
「いやぁ、なんかね、大丈夫だったんですよ。お客さんがね、ギアをね、Dにね・・。」

うわぁん。ごめんよぉ。私が悪かったよぉ。

「すみません。それじゃぁ、なんとなく心配なんでオイル見て貰えます?」
「いいですよ。うわっ、汚れてるし、少ないなぁ。」
「オイル交換します。」
「わかりました。15分程で終わりますよ。」

私は、漫画の続きを読み、それからへこへことお辞儀をしながらバッテリー交換を済ませたばかりでオイル交換を済ませたばかりの外車に乗ってやっと家にたどり着いたのである。
これでもう本当に無敵のはずだ。

あれ?・・・ガソリンメーターの針が随分下のほうを指しているな・・・。
ガソリン入ってないじゃん!


1999.9.30
ごめんなさい。ごめんなさい。正直に言います。縁石にちょっとだけこすってしまいました。
右側後輪です。やっぱり右側です。せっかくの純正ホイールがちょっとだけ歪んでしまいました。
軽自動車歴の長い私にはちょっと大きすぎる車です。
左ハンドルにもだいぶ慣れたと思ったのに。
まだ車の形をしている間に誰かに買って貰おうと決心するきっかけになりました。

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蟹屋 山猫屋